約 2,472,212 件
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/630.html
「ちょっと違った未来4」 ※原作IF 京介×桐乃 「そう…そんなことがあったの…。」 「ああ…。」 俺は今、大学のカフェテリアにいる。 元恋人で現友人の、黒猫こと五更瑠璃に今回の件ーーー桐乃と俺が事故に合ったその後の経過の話をするためだ。 桐乃と俺が事故にあった時、すぐに彼女は病院まで駆けつけてくれた。激務で忙しい仕事を途中で切り上げてまで。 その後色々と時間を見ては俺や桐乃の身の回りの世話を焼いてくれ(瑠璃曰く、女には女にしかわからないことがあるものよ。だと、さ。)、そのことに親父とお袋はとても感謝していた。 当然桐乃の身の回りのことをしてくれていたのだから、その異変にーーー勘の鋭いこいつが気づかないわけもなく、すぐにその異常を把握した。 そう、桐乃はーーー記憶を失っていた。それも何故か「俺」や「オタク関係」のこと全てについてだ。 初めは正直こんなことってあるのかよ!?と半信半疑だったが、桐乃の演技だとは思えなく(そもそも疑ってもいないが)、医者もこんなケースは初めてらしく慎重に途中経過をみていくという線に落ち着いた。 なんでこんなことに…。しかもそれだけじゃない。 「でも、あの子が黒髪に…。確かに今のあの子の性格にはその方があっているのでしょうけれど…。」 「いや、そうだけどさ。なんかもとの桐乃の接点、ていうのかな。そういうのがどんどんなくなっちまうよそれじゃ。」 もひとつ問題点。桐乃は記憶だけじゃなく性格まで変わっていた。以前のパワフルで勝気な性格(それでも中学時代と比べたら随分落ち着いていたのだが)がなりを潜め、すっかりおとなしめの気の弱い美少女、という感じになってしまった。親父やお袋に対しては自然だが、俺や瑠璃、沙織にはかなりよそよそしい。それは桐乃にとっては…俺達は「知らない人」だからだろうか…。 「無理に何かを今の桐乃に言い聞かせるのは…気が引けるわね…。あの子、かなり無理してるから。」 「やっぱりおまえもそう思う?」 「ええ。私は記憶喪失なんてなったことがないからわからないけれど…相当負担がある筈よ。特に心に…。皆が言うことが全く記憶にない。しかも相手は自分のことを知っている。…葛藤がそこにあることは容易にわかるわ。」 「だよなぁ…。」 瑠璃はティーカップに入った残りの紅茶をどこか上品なしぐさで飲み干し、 「ごめんなさい、もうそろそろ会社に戻らないと…。」 「あ、ああ。すまねえな、今日は。忙しいところ。」 「なにを言っているの。これぐらいなんでもないわよ。」 「いつも世話になるな。送ってくよ…って車で来てたよな。」 「ええ。そういうわけだから見送りは結構よ。」 「仕事、忙しいのか?」 そうたずねると瑠璃はため息を漏らした。 「うえ(営業部)がまた余計な案件を取ってきたのよ…。まだこなしきれる量だからいいけれど、また前みたいになったら何人か辞めていくわね。」 「おまえ…大丈夫なのかよ?」 「ありがとう。でも無理と判断したらすぐに相応の対応を取るわ。それに貴方や沙織もついてるし…自分ひとりだけの判断じゃない。まだまだ大丈夫よ。」 「そうか。俺に出来ることがあったらなんでも言ってくれ。つっても逆に世話になりっぱなしなんだけどさ。」 ポリポリと頭をかく俺のこめかみに瑠璃はそっと指を重ねて、 「妹が心配なのは解るけれど…貴方こそ、無理はしないでね。お願いよ。貴方までどうにかなったら私…。」 「瑠璃…。」 彼女の沈痛な顔を見るとどれだけ今回の件で迷惑をかけたのか…心に染みた。 4年前からそれまで俺達は本当に仲が良かった。 俺は大学生に、桐乃も海外のモデルの仕事を辞退し日本の高校へ…。その後沙織は名門女子大学へと進学を果たし、続いて瑠璃はIT系の専門学校へ通い始めた。 瑠璃だけ一足早く就職したけれど、それでも時間を見つけては俺達との時間を本当に大切にしてくれた。 俺はあの時桐乃のことを兄として選んで、その後男としても桐乃を選んだ。だけどそんな俺達を皆は祝福してくれた。 とりわけ瑠璃はその後も変わらず俺達を見守ってくれた。就職してからというもの、ハイスピードなリズムを仕事に要求されるからか、いっそう増した怜悧できびきびした容姿に隠された彼女の優しい心根は…本当に暖かい。 彼女は何も変わっていない。出会った時から、ずっと。 「じゃあ、もう…いくわね…。」 「ああ、また近いうちに。また連絡するよ。」 そのまま颯爽とカフェを出て行った。しっかりとしてその足取りは次のスケジュールを頭の中で練っているのだろう。 「俺も行くか…。」 そのまま注文したコーヒーを飲み干し、店を出た。 ☆★☆ 「んーと…この辺の筈なんだけど…。」 お母さんから手渡された住所とにらめっこしながら…あたしこと高坂桐乃は目的の住所までの道のりを歩いている。 「ここの店が右だから…あっ、あそこだ。」 あのアパートの二階に…あたしのお兄ちゃんこと高坂京介、さんが住んでいる。 ーーー正直、ここにたどり着くまで何人もの男の人に声をかけられて凄く怖かったけれど…なんとか振り払って無事(?)にたどり着くことが出来た。 「やっぱりお母さんについて来てもらったらよかったかな…。」 でもそんなことしたら、あたしが京介さんとちゃんと向き合うということが出来なくなる。いつまでも甘えていられない。 「えっと…いる、かな…?」 チャイムを鳴らす。 ピンポーン。 …。 「あれ?もう一回…。」 ピンポーン。 …。…。 「いないの、かな。じゃあ、」 引き返そうという足を見て、止めた。…すごく弱気になってる。そんなにもあの人と、会うのが…。でも…。 「よし!」 パンパン!とほっぺを鳴らして気合を入れる。ここで引いたら逆戻りだ。何も前に進めない。 「えーと、鍵は…んしょんしょ。…あった。」 ピンクの熊のかわいらしいキーホルダーがついた鍵を鍵穴に入れ、ドアを開けた。 「お、おじゃましま~す…。」 さわさわさわ…。 暖かい日の光が窓からふんだんに降り注いでいた。その部屋の人の心の中をあらわしているのかな、なんてことをふと思ってしまう。 大きめのベッドに机に本棚…。奥には流しがある。男の人の部屋なのは間違いないんだけど、所々に女の人の物がある。 机の上に立ててある板に貼ってある写真に目がついた。そこにはあたしが楽しそうな笑顔で色んな人と写っていた。 あやせとも、加奈子とも、そして…黒猫さんや沙織さんに…そして…真ん中には。 「京介さんと、あたし。」 京介さんの腕を抱きしめるように組んで、笑顔で写っている。京介さんはどこか照れくさそうに、でも顔をほころばせていた。 「…。」 …ダメだ。どうしても思い出せない。この部屋だってとても大切な場所のような気がする。無視しちゃいけないって、心の中の誰かが叫んでる。だけど…。 頭が痛い…。 あたしはベッドに身体を横たえた。勝手に許可もなく使うことに抵抗がよぎったけど、そうしちゃいられない。 ベッドにはグリーンとピンクの枕が揃えて置いていた。 …あたしはグリーンの枕に顔をうずめた。 (…いい匂い。) (なにかとても…優しい匂いがする…。) (あの人の、匂いだ…。) (いつもあたしがどれだけぎこちなくても、優しく接してくれる…。) (お兄ちゃんの匂い…。) 柔らかな日差しと心地いい匂いに包まれて…あたしは眠りに落ちた。
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/479.html
http //pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1303394673/253-262 「お兄さん! ご相談があります!」 俺の目の前に居る黒髪でスタイル抜群の美少女は言うまでもなく ラブリーマイエンジェルこと新垣あやせだ。 その美少女あやせから相談を持ちかけられるのはこれで何度目だろう。 そして酷い目に合うのは、これで何度目になってしまうのだろうか。 酷い目に合うくらいなら、あやせの相談など聞く耳を持ちたくはないのだが、 相談を断ったら、あやせの仕打ちが怖すぎる。 仕方ない。あやせの『相談』とやらを聞くことにするか。 「で? 相談って一体何だ?」 「お兄さん。わたしの恋人になって下さい」 「よしわかった」 「即答ですか!? 少しは驚くとか、聞き返すとか無いのですか?」 即答に決まっているだろ。聞き返すだって? 俺が聞き漏らすわけ無い! 「わたしの話を最後まで聞いて下さい! さもないと通報しますよ」 ああ。やっぱり何らかのエクスキューズがあるわけね。期待させるなよ、ホント。 「恋人になってくれって、どうしてまた?」 「実はわたし、ドラマに出演することになったんです」 「マジかよ! すげえじゃん!!」 「ええ。恋人同士のストーリーを演じるのですけど」 こ、こ、恋人同士だぁ!? 許せん。どこのどいつがラブリーマイエンジェルの恋人役を!? 「それでご相談というのは、わたしの演技の稽古に付き合って欲しいんです」 「え? つまり、俺にあやせの恋人役をやってくれと(グフッ)」 「お兄さん、気持ち悪いです。あくまでも演技の、稽古としてですからね!」 演技の稽古とはいえ、あやせたんと恋人同士になるなんて最高じゃないか! 「どんなシーンの稽古をするんだ? もしかして、キスシーンとか!?」 「い、いやらしい! 何を考えているんですか!? そんなシーンありません!」 あやせが身を捩りながら、両の手で自らを抱きしめる仕草をする。←少しエロい 「で、どんなシーンなんだ?」 「結構シーンが多いんです。待ち合わせとか、一緒の買い物、映画、食事とか」 「へー。まるっきり恋人同士のデートだな」 「そんな軽い感じで言わないで下さい! わたし、この仕事に賭けているんです」 「悪い悪い。でもそれってどうやって稽古するんだ? 部屋の中でやるのか?」 「いいえ。実地で稽古をつけてもらいます」 「つまり‥‥‥その、俺とあやせがデートをするってコトか?(グフフッ)」 もしかしたら、今の俺ってスゲーニヤけた顔をしているんじゃないか? と言う漠然とした疑問を感じていたが、その疑問はあやせのフルコンによって 確証へと変わった。 言っておくが、あやせがフルコンプリート上等のゲームオタになったのではない。 あやせのフルコンタクトを俺が喰らったってコトだ。マジ、いってえよ! 「お兄さん? いかがわしいコトを考えたら直ぐに解りますよ?」 俺は鈍痛を感じる腹を摩りながら、あやせの警告じみたセリフを拝聴した。 ‥‥‥‥‥‥ さて、稽古の当日がやってきた。 俺があやせとの待ち合わせ場所に向かうと、あやせはすでに来ていた。 「悪いな、待たせて」 「いいえ、わたしも今来たところです」 いやいやいや、ホントは30分くらい待っていたんじゃないのか? ホント可愛いなあやせたん、という想いはあやせの意外な申し出に遮られた。 「お兄さん。稽古を始める前に、わたしと契約をお願いします」 「ケイヤク‥‥‥? それって俺と将来を誓うってコトか?」 「ブ、ブチ殺されたいんですか? 稽古の最中にわたしにヘンなことをしない と言う契約に決まっているじゃないですか!!」 契約ねえ‥‥‥。最近『契約』って言葉にはウラがある気がしてならない。 できれば、契約なんてしたくねえよ。ましてや契約相手はあやせだぞ? ぜってー、ウラがあるって! それも超弩級のモノが。 「ごめん。契約はできない。でも! お前にヘンなこと、絶対にしない!」 「ホントですか‥‥‥? いいです。信用します!」 意外にもあやせは俺の申し出を受け入れてくれた。ちょっと拍子抜けだな。 「最初は買い物のシーンからお願いします」 「つまり、俺とあやせで買い物をするってコトか?」 「そうです。実地の稽古ですから」 まさか、イブの時の桐乃みたいに、アレ買えコレ買えって展開か? 何かイヤな様相を呈してきたな。 などと俺が不安に駆られていると、あやせは俺の左腕にしがみついてきた。 「お、おいッ!」 「何ですか? 恋人同士の演技の稽古ですよ? このくらいしないと!」 なんてこった。まさかラブリーマイエンジェルにしては大胆な行動だ。 これは稽古とは言え、展開が楽しみだぜ!! 最初に俺があやせに連れて行かれたのはアクセサリーショップ。 とは言うものの、桐乃に連れて行かれた店に比べれば、ずっと安価な品揃え。 そうだよな。あやせくらいの年齢なら、このくらいの値段のアクセサリーを ねだるのが普通なのだろう。桐乃が異常だっただけだな。 外見よし、スタイル抜群、あまりお金もかからない。コレで性格が‥‥‥ いかんいかん。欲張ってはイカン。 ‥‥‥‥‥‥ 「次は映画ですね。この映画にしましょう」 と、あやせが指差した作品は、ライトノベルを書く高校生のストーリー。 映画の内容に突っ込みを入れるのは無粋だと解ってはいるが、 ラノベって、高校生でもそんなに簡単に書けるモノなのか? 桐乃もケータイ小説を書いていたが、アイツだって結構苦労して書いていた 気もするけどな。そんな簡単に書けるモノじゃないよな、多分。 う。何かあの小柄な女子高校生、ちょっとイラっとする声質だな。 なぜだろう。 ‥‥‥‥‥‥ そして食事。 考えてみれば、あやせと二人で食事するなんて、初めてだよな。 モデルであっても人によっては大食な人もいるようだが、 あやせはやっぱり小食だった。訊けば、モデルは自己管理も厳しいらしい。 そう言えば桐乃もあまり食べる方じゃないな。アイツも自分には厳しいからな。 ‥‥‥‥‥‥ 食事を終えた俺とあやせは公園を散策している。公園散策なんて地味なコース、 麻奈実にしか通じないと思ったがそうでもないようだ。 「あの、お兄さん? ひとつ訊いていいですか?」 「なんだ? あやせ」 「お兄さん、もしかして今日の稽古の間中、桐乃のことを考えていませんか?」 「え‥‥‥? どうしてそう思うんだ?」 「お兄さん。質問に質問で返すのは図星と取られても仕方ありませんよ」 「‥‥‥」 確かに。 俺は無意識に『あやせは○○。そして桐乃は××』って比較を繰り返していた。 考えてみればあやせに失礼な話だ。本当のデートではないとはいえ、 あやせが真剣に取り組んでいる演技の稽古の最中に、俺は本当に失礼なヤツだ。 公園の池に架かる小さな吊り橋の上で、俺が打ち拉がれた気分になっていると、 「ごめんなさい、お兄さん。ちょっと雰囲気を悪くしちゃいましたね」 「いや、そんなこと無いぞ」 俺は、俺に背を向けて吊り橋から下を見るようにしていたあやせに囁いた。 その時、一陣の風に揺すられた吊り橋の上で、あやせが体勢を崩した。 「きゃっ」 「危ねえ!」 俺は背後からあやせを抱きしめ、体勢を立て直させた。 うわ、わ、わわわ、あやせたんを抱きしめてしまった。 「お、お兄さん! ドコを触っているんですか!? い、いやらしい!!」 「お前が、橋から落ちるかと思ったから」 「あ、ありがとうございます」 俺は冗談半分で、あやせを少しだけきつく抱きしめた。 「ダメですよ! お兄さん、契約してくれなかったじゃないですか!!」 「え‥‥‥? それじゃ、契約していたら、どうなっていたんだ?」 「それは今からじゃ言えませんよ」 「じゃあ今から契約するぞ!」 「それはダメです。時間切れです。『覆水盆に返らず』ですよ」 ああああああ! 俺の頭の中で人参・大根・胡瓜・茄子・莢豌豆が 『もったいねぇ~ もったいねぇ~』と声を揃えていやがる。 ‥‥‥‥‥‥ 後日、あやせが出演したドラマのネット配信を桐乃と一緒に見た。 今日が、女優・新垣あやせの誕生の日か、と思いつつ、桐乃の部屋の パソコンの前に俺と桐乃は鎮座した。 そしていよいよ、配信開始時刻に。 『オッス! あやかだよ。恭介さん、遅いんだから!』 あやせ演じる“あやか”が、恋人“恭介”との待ち合わせからドラマが始まった。 うおおおおお、ラブリーマイエンジェル兼アクトレスあやせたん、最高だぜ! 『恭介さん、私と契約して下さい』 へ? 契約のセリフじゃないか。アレも稽古の一環だったのか。 『あやか? 契約って‥‥‥?』 『恭介さんがわたしといつまでも一緒に居るという契約です』 『もちろん、契約するぞ!』 “恭介”役の俳優がニヤけながら、“あやか”と契約をする。 クソ! これでドラマの中であやせたんとイチャつくってコトかよ。 また野菜共が俺の頭の中で『もったいねぇ~』と言ってやがる。 そしてドラマは、稽古通りのストーリーで進行する。 演技とはいえ、あやせたんのイチャつくシーンがこれほどイラつくとはな。 しかし冷静に考えると、稽古の時の俺たちもこんな状態だったワケだから、 そう考えるとあまり腹も立たない。 そして場面は郊外の渓谷に架かる吊り橋。吊り橋のシーンも稽古だったのか。 『やだ! 怖い!!』 『ははは。大丈夫だって、あやか。俺がついている』 『恭介さんって頼りになるのね!』 その時、吊り橋が揺れ、あやせ演じる“あやか”が体勢を崩した。 『きゃっ』 『危ない!』 “恭介”が背後から“あやか”を抱きしめ、体勢を立て直させた。 うわ、わ、わわわ、俺って端から見るとこんな状態になっていたのか!! 『恭介さん! ドコを触っているんですか!? い、いやらしい!!』 『お前が、橋から落ちるかと思ったから』 『ありがとう。うれしい‥‥‥』 背後から抱きしめられた“あやか”が“恭介”の腕を手に取った。 そして――― ガチャ は‥‥‥? 俺の目に、信じ難い、しかし既視感のある光景が展開された。 “あやか”が“恭介”の左手に手錠を打ち込み、もう一方を自らの右手に打ち込んだ。 『あ、あやか? 何だこれは?』 『ウフフフフ。これで、あなたとわたしはいつまでも一緒ね』 『‥‥‥』 『どうしたの、恭介さん? 嬉しくないの?』 『あ、いや‥‥‥取り敢えずコレ、外してくれないか?』 『どうして? いつまでも一緒に居られるんだよ?』 『あ、あやか? お前‥‥‥?』 “あやか”の目から光彩が消え失せ、“恭介”の表情が見る見る曇っていく。 『だって恭介さんって、ほかの女の人に優しすぎるんだもん。 学校じゃ同級生、後輩の女の子、妹さんの友達にも優しいし、 そして何よりも、妹さんへの優しさ‥‥‥わたし、許せない。 わたしだけに優しかったら、凄く嬉しかったのに!!』 『落ち着け、あやか!』 『ウフフフフ。もうダメよ。恭介さんはわたしと契約したのだから』 け、契約‥‥‥!! 『恭介さん、下を見て。いつもなら水がいっぱい流れているのに、 今は水が少なくて、岩が剥き出しになっているよ。落ちたらどうなるのかな?」 『あ、あやか! やめろ!!』 『恭介さん、ずっと、ずーっと一緒だよ』 『あやか! やめろ!! あやかあああああぁぁぁぁ‥‥‥』 “恭介”の叫び声と木立から飛び立つ鳥の羽音が重なった音を背景にした青空。 その次のシーンでは、誰も居ない吊り橋が揺れていた。 そしてエンドロールが流れ始める。 ‥‥‥‥‥‥ 「うわあ、あやせの役、こわーい!」 「ああ‥‥‥、スゲー怖い‥‥‥な」 桐乃のドラマの感想に、俺はそれしか言えなかった。 いや、これはドラマ! 要するにお芝居! フィクションのテロップも出た! 作り話さ! こんなこと現実にはない‥‥‥はずさ。 ‥‥‥‥‥‥ 俺は自分の部屋に戻ると、あることに思いを馳せていた。 もしあの時、あやせと「契約」していたら、今俺はこの場に居ただろうか?と。 ピリリリリリ 電話か。―――ッ!! あやせから!? ピッ 『お兄さん、わたしの演技どうでした?』 あやせはまるで子供のようにはしゃいだ様子で、俺の感想を聞いてきた。 「あ、ああ。凄く良かった‥‥‥ぞ?」 『ホントですか? 嬉しいです!! お兄さんと稽古した甲斐がありました!』 「お役に立てて‥‥‥ホント良かったよ」 かつてこんなに息苦しい電話があっただろうか。 『ところでお兄さん? ご相談があります!』 「何だ?」 『実は、わたしの演技が好評だったようで、次の出演が決まったんです!』 アレは“演技”なのか? そうなのか? 「そうか。よかったな、あやせ。今度はどんな役なんだ?」 『年老いた資産家と結婚する若い女性の役です』 「‥‥‥」 『そこで、また演技の稽古を』 ピッ 俺は通話を切り、携帯の電源も切った。 『新人女優』 【了】
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/421.html
http //pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1298520872/244-259 初夏。 早朝。 今日も朝から快晴だった。 そして今日は祝日で、さらに今日から長い夏休みの始まりであり、好きなだけ惰眠を貪れる期間でもあった。 しかし… 「うー…今日も暑っちーなぁ…」 あまりの暑さに目が覚めちまった…。 もうちょい寝ていたかったんだけどな…。 それにしても…本当に暑っちー…。 おかげで下着まで汗でびしょ濡れだよ…。 「しょうがねー…着替えて朝飯にでも行くか…」 俺は着替える為に、寝巻を脱ぎ始めた。 その頃、リビングでは… 「桐乃ー、ちょっと悪いけど京介を起こしてきてくれない?」 「えー…? 面倒くさいなぁ…」 今日は休日。 だけど我が家は、食事は平日も休日も関係なく、いつも決まった時間に食べるのが習わしになっている。 もうすぐ朝食の時間で、お母さんは準備の仕上げに入っていた。 そしてあたしはお母さんに頼まれて、兄貴を起こしに行く。 本音を言うと面倒くさいけど、朝ご飯抜きはさすがに可哀想だもんね。 うんうん、あたしってホントできた妹だよねー♪ 階段を上がって兄貴の部屋の前に来たあたしは、ノブに手を掛けて扉を開いた。 寝巻を脱ぎ、たまたまあったタオルで身体を拭いて、下着を替えようとパンツを脱いだ瞬間だった…。 ガチャ 「兄貴、そろそろ朝ご飯だ…よ…」 妹様が、何の前触れもなく、ノックもせず…扉を開けやがった…。 今の状況を説明すると… 俺は下着を着替える為にパンツを膝ぐらいまで脱いだ。 因みに上着は一切何も身に着けていない。 つまり、ほぼすっぽんぽんの状態だ。 それに対して桐乃はTシャツに短パンというラフな普段着姿で、ドアノブに手を掛けて扉を開いた状態で固まっている。 目線は…俺のナニに釘付けになっていやがるけどな…。 「う…」 「き…」 「うわああああぁぁぁぁ!!!」 「きゃあああああぁぁぁぁ!!!」 「あ…ああああ…あんた、何そんな汚いモノを見せてんのよ、このヘンタイ!」 「るせー! てめー、人が着替えている最中にいきなりドアを開けやがって!! ノックぐらいしろといつも言ってるだろうが!!!」 「いいから、その貧相なモノをしまいなさいよ!!」 「な…だれが貧相だ! てめー、他人のモンでも見た事あんのかよ!!」 「な…! あ…あるワケないでしょ!! ヘンタイ!!!」 桐乃が涙目で俺を睨んできた。 てのか、そんなに見たくなけりゃ扉閉めればいいだろうが…。 「…で…? てめーはいつまで俺の着替えを見てるんだ…?」 俺はジト目で桐乃に尋ねた。 するとどうだろう、桐乃は気付いた様子でハッとして、みるみる顔が真っ赤に染まり… 「…ぐす…っ…知るか! バカ!!」 バタン!!! 桐乃は逆ギレして、涙を浮かべながら扉を乱暴に閉めた。 …少し大人げなかったかな…。 いや、今回ばかりは俺が被害者なんだから、譲歩する必要はねーよな。 まぁ…あとであいつの我侭にでも付き合ってやれば、機嫌は収まるだろ。 そういう結論に達した俺はとっとと着替えて、桐乃から少し遅れてリビングに向かった。 「お早うー」 俺は朝の挨拶と共にリビングに入る。 そこにはお袋と共に、さっき怒って先に降りて行った桐乃が座っていた。 桐乃は…まだ顔を真っ赤にして怒っている様子だ。 その証拠に、ギロリ…という擬音が聞こえてきそうな形相で俺を睨んできたよ。 あーこわ。 「あんた、桐乃に何したのよ? さっき泣きながら降りて来たわよ? 理由聞いても答えてくれないし…」 お袋が俺を諌めるように言ってきた。 なんだ、桐乃は何も言ってねーのか…じゃあ俺も答える必要無いな。 「別に、大した事じゃねーよ」 俺はあまり取り合わないようにして席に座った。 隣に座る桐乃がまだ横目でにらむので、俺は桐乃の頭をくしゃっと撫でる。 「さっきは言い過ぎた。 悪かったな」 桐乃は真っ赤な顔のまま俯いて、「ん…」と首を少しだけ縦に振った。 いつまでも喧嘩しててもしゃーないし、俺が折れるつもりで桐乃に謝る。 これで御破算でいいよな。 「「いただきます」」 それじゃ、朝飯でも食べますかね。 「ごっそーさん」 「御馳走様でした」 俺たちは同時に朝食を終え、一旦自室に戻ろうと階段を上る。 階段を上り切り、部屋に入ろうとした時、桐乃が口を開いた。 「あんた、今日の予定は?」 今日の予定? 桐乃がそういうのを聞いてくるとは珍しいな。 「午前中は麻奈実と図書館で受験勉強。 午後からは一応空いてる」 別に隠す必要も無いので、俺は正直に答えた。 「チッ…地味子か…」 麻奈実と一緒というの部分に反応して、桐乃は露骨に嫌を顰めて盛大な舌打ちをかましてきやがった。 今更だからいいけどさ、そういうのはせめて当事者の居ないところでするものだぞ、妹よ…。 「じゃあ午後からあたしに付き合って」 ほらきました。 多分そうじゃないかと思って、午後は空けといたんだよな…。 「へいへい。 で、どこへ遊びに行きたいんだ? アキバか?」 こいつの事だから、俺と一緒の場合はファッション系ではなくオタク系の場所だろう。 大方アキバか新宿…ぐらいじゃねーかな…と思って聞いてみたら… 「アキバもいいけどさ、今日はブクロに行きたいんだよね」 池袋…予想外の回答が来たぞ…。 池袋っつったら…瀬菜のヤツが以前『池袋には乙女ロードがあって、そこがあたしたちのホームだ』とか言っていた気がするが…、ま…まさか… 「き…桐乃…お前まさか…BLに転んだワケじゃ…ゲフぅッッ!!!」 お…ふ…不意打ちでボディーブロー…かまされた…ゲフ…。 腹を押さえて桐乃を見たら、真っ赤になって怒っていた…。 「ふざけんな! あたしがBLに転ぶワケないっしょ!! キモい事言うなっての」 どうやら桐乃にとって、BLは否定しないが相容れないものらしい。 そりゃあ今の今まで妹ゲーやってたんだから、まさかとは思ったけどさ…だからって、いきなりボディーブローはねーだろうよ…。 「あたしが付き合ってほしいのは、しすしすオンリーで、 ホントは午前中から行きたいけど、あんたも受験生だから我慢してあげてんじゃん」 「しすしすオンリー?」 聞き慣れない言葉が出てきたぞ? 俺が頭に疑問符をつけていると、桐乃は『そんな事も知らないの?』的な顔をして、腰に手を当てて説明してきた。 「しすしすオンリーってのは、しすしすのみをテーマにした同人誌即売会で、他のジャンルでもそういう一定のテーマに限定にしたオンリーイベントが、毎週都内のどこかで必ず行われているの。 で、今日は池袋のサンシャインシティでそれが行われるってワケ」 なるほどな。 同人誌即売会はコミケだけだと思っていたから、そういうのがあるとは知らなかったぞ。 本当に同人誌ってのは奥が深いな…。 「で、開始が11時なんだけどさ…」 桐乃はちらっと上目遣いで俺を見てきた。 …そういう視線は反則だろう…お前…。 俺はちらっと腕時計に目をやった。 8時40分か…ここから池袋だと…2時間近くかかるな…。 午後からだと間違いなく間に合わないだろう。 しゃーねーか…。 俺は自室に入り、扉を開けたままケータイを持って、ある電話番号にダイヤルした。 「もしもし麻奈実か? 悪いけどさ、今日の勉強会だけど…ドタキャンさせてくれ。 この埋め合わせは必ずするから。 ああ、悪い。 明日は必ず。 ああ。 じゃあな」 麻奈実に勉強会中止の連絡を入れて、俺は桐乃に向き直った。 「桐乃、池袋に行くから準備してくれ」 俺の言葉に桐乃はきょとんとして、頭に「?」マークを浮かべている。 「え? …てのか…勉強会はいいの…?」 「今日1日くらい休んだって影響はねーよ。 それよりも…しすしすオンリー、楽しみにしてるんだろ?」 桐乃は暫く呆然としていたが、俺の言葉の意味を理解したのか、顔に少しずつ笑みを浮かべて… 「うんっ!」 最後には天使の様な笑顔で慌てて自室に戻っていった。 そして約2時間後…俺たちは池袋のサンシャインシティに着いた。 コミケ程ではないとは言え、けっこうな人数が並んでいる。 桐乃が準備出来てすぐに俺たちは千葉駅へと向かい、千葉~快速~錦糸町乗換で各駅停車~飯田橋で地下鉄乗換~東池袋というルートを使って1時間半で行けた。 サンシャインは池袋が最寄りかと思っていただけに、このルートはけっこう便利だ。 桐乃は俺の分を含めてカタログを2部購入し、早速サークルチェックに取り掛かる。 カタログを買って来た時の桐乃の顔は、まるで子供みたいに楽しそうだったな…。 因みに俺は最初から桐乃の荷物持ちのつもりで来たから、カタログのチェックはしていない。 それから少しして、一般入場が始まった。 それと同時に桐乃はサークルチェックを終えて、臨戦態勢に入る。 今回の参加サークル数は大体80ぐらいだったので、サークルチェックも簡単だったみたいだ。 「兄貴、入ったらすぐに○○△に並ぶから、ついてきて!」 桐乃の頭では既にシミュレーションが出来ているらしい。 ホント、自分の趣味になると、こうも人間って変わるものなのね…。 俺は半分呆れつつも、桐乃に従って行動を共にした。 それから2時間。 全てのサークルを回り終えた桐乃と俺は会場を後にした。 けっこう豊作だったらしく、桐乃はとても御満悦な顔をしていた。 その分だけ同人誌の冊数もあるから、手提げ袋が手に食い込む分だけ重いんだけどな…。 池袋駅へと向かう途中のサンシャイン通りで俺たちは軽く昼食を摂り、ゆっくりと雑談を交わしていた。 「兄貴…今日はあたしの我侭に付き合ってくれて、ありがとね」 「おいおい、どうしたんだよ急に」 今日はえらく殊勝な事を言ってるな。 「だってさ…受験生じゃん、兄貴…。 夏コミにも付き合ってもらうのに、さらに一日あたしの為に潰してくれて…」 どうやら俺が麻奈実との勉強会をドタキャンしたのを気にしているようだ。 「大学受験てさ、高校受験の比にならないぐらい…難しいんでしょ…? だから…午後だけでよかったのに…」 「いいんだよ、桐乃」 俺は桐乃の頭の上に手を置いて、軽く撫でてやった。 「今日桐乃に付き合うと決めたのは俺の意思だからな、お前が気にする必要はねーよ。 だから今日は一日中、何にでも付き合ってやるぜ」 桐乃の頭を撫でながら、俺は桐乃に気にするなと伝えると、桐乃は顔を真っ赤にして、軽く頷いた。 これ…今朝も同じ様な事をした気がするな…。 「よし、じゃあ次はどこへ行きたい? さっきも言ったが、今日はどこにでも付き合ってやるよ」 「………ホントに…いいの…?」 まだ桐乃は気にして聞いてくるので、『気にするな』と、俺は桐乃に対して首を縦に振って応えた。 その答えに桐乃は、今朝の様な満面の笑みで返してくれた。 「じゃあ、次はアキバに行こ♪」 それから数時間後、俺たちはとらのあな、メロンブックス、ソフマップやラジオ会館などのアキバ散策を満喫して、自宅へと向かっている。 桐乃から『ささやかなお礼』ということで、帰りは東京駅からちょっとだけ贅沢してグリーン車で千葉まで戻った。 俺は普通車でもいいと言ったけど、桐乃はこういう時は絶対に譲らない。 その辺りは親父そっくりで頑固だなと思う。 でもまぁ…今日一日ずっと歩きまわったから、桐乃のこの心遣いは正直言って有難かったな…。 そして夜。 晩飯が終わった後、桐乃がシスカリ対戦を希望してきたので、俺は桐乃の部屋に向かった。 対戦ゲームが終わり、そろそろ自室に戻ろうかという時だった。 「ちょっと待って…」 と、桐乃は俺を呼び止めた。 何か思案顔をしていた桐乃はパソコンチェアを立ったかと思うと、扉の鍵を閉めてベッドに座る。 鍵を閉めた…って…一体何を考えているんだ? コイツは…。 「あ…あのさ…最後に…もう一つだけ、お願いがあるんだけど…」 桐乃は何かを躊躇う様に、重く口を開いた…。 「あんたのソレ…もう一度…じっくりと見せてくんない…?」 ……はい…? 何か、とんでもない事をぬかしましたよ、この妹!? お…おおお…俺の…モノ…見せろって… 「おおおお…お前、何考えてやがるんだ!? 俺の見せろって、変態か!!」 「あんたが朝っぱらからあんなの見せるから、今日一日ずっと頭から離れないんじゃないのよ! 責任取ってよ!!」 「責任取れって…アレはお前が悪いんだろうが!」 ああもう…忘れてたのに蒸し返しやがって、ホントこいつが何を考えてるのかたまに分からなくなるわ…。 「それに…兄貴、『今日一日は何にでも付き合う』って言った…」 ええ!? それって…こんなアホな事も含まれるの!? 確かに言ったけどさぁ…。 ああもう…好きにしろ!! 俺は開き直って桐乃に尋ねた。 「…で? 責任取れって…俺のナニ見てどうするつもりなんだよ…」 「…じっくり観察する」 はあ? 観察?? 「エロゲーじゃモザイクかかって分からないから…実物がどんなのか…見てみたいかな…って…」 …興味本位っすか…。 俺だって男なんだけどなぁ…分かってるんだろうか、こいつは…。 しゃーないから、一応釘刺しておくか…。 「あのな、俺だって男だぞ。 それが何を意味するのか分かってるんだろうな?」 桐乃は真っ赤な顔になって目を見開いた。 次に機関銃のような罵詈雑言が来るものだと警戒していたら… 「…い…いいよ…アンタだったら…」 …はい…? 「あの…桐乃さん…?」 「だから、兄貴だったら…その…間違いが起こっても…いい…って言ってんの…。 何度も言わせないでよ…」 そ…それって…。 「つべこべ言ってないで、早く見せればいいでしょ!!」 桐乃はヤケっぽく文句を言ってきたと同時に、素早くベルトに手を掛けて…一気に俺のスポンとパンツを下ろしやがった…。 そして…露わになる、俺のモノ…。 それを桐乃が興味深そうに凝視している…。 「うわぁ………お…思っていたより…その…グロテスク…?」 グロテスクって…まぁ…そうだろうなぁ…。 初めて見るんだろうから、そんな印象を持ってもおかしくないわな…。 「へぇ…」 桐乃は俺のを興味深げにジロジロと色々な角度から観察しているが…これ…なんて羞恥プレイだ? 俺が恥ずかしい思いをしているだけじゃねーかよ…。 「…あ…あのさぁ、桐乃…。 その…ジロジロ見られると…恥ずかしいんだが…」 「…もうちょっと我慢してくんない…?」 桐乃は俺の意見を却下した…。 うう…涙が出そうだ…。 「ねぇ…兄貴…」 「あん…?」 桐乃が上目使いで俺を呼ぶものだから、俺は桐乃に顔を向けた。 すると… 「今日一日…ホント…ありがとう…。 今からのは…全て…今日のお礼だから…」 と、一言だけ口を開いて… 「ん…!」 「………!?」 何を思ったのか、桐乃は急に…俺の唇を塞いできた…。 そしてそのまま舌を俺の口の中に侵入させ、口腔内をくまなく貪り始めた。 「んむううぅ…!?」 「ん…んむ…っ…んん…っ」 「ん…んんん…んむむ…」 あ…やべ…桐乃の舌の気持ちよさに…頭がボーっとしてきた…。 そしてそれに反応するように…俺のモノも…カチカチに硬くなりましたよ…。 「ぷは…」 桐乃の口が俺の顔から離れ…俺と桐乃の唇を、透明の唾液が糸を引く様に伝う…。 そして、桐乃は視線を…硬くなった俺のモノに移した…。 「…ごく…っ…これが…男の人の…」 桐乃が艶やかな表情で俺のを凝視し、その直後… 「はむ…」 桐乃は躊躇う事無く…俺のを…頬張った…。 「ん…んちゅ…んん…」 兄貴のアレを見ているうちに、気持ちが高ぶっちゃって…あたしは…兄貴のを頬張っちゃったんだけど…せっかくだから…兄貴にも気持ちよくなってもらいたいな…。 あのゲームのフェラチオのアニメーションシーンを参考にしてるんだけど…確か…こんな感じ…だったかな…。 「お…き…桐乃…すげ…気持ちいい…っ…」 兄貴…あたしの口で気持ちよさそうにしている…。 ちらっと表情を見たけど…なんか…可愛い…♪ もっと…もっともっと気持ちよくなってもらお…。 あたしは兄貴のを隅々まで舐め回し、時には竿を甘噛みし、時にはぶら下がっている袋を咥えて口の中で舐め回しと、色々と試してみた。 そして兄貴が一番気持ちよさそうにした場所…その…兄貴のモノの先っちょと亀の頭の首筋みたいな部分を、重点的に舌先で攻める様に舐め回した…。 「やべ…桐乃…出ちまう…」 兄貴がそろそろ限界のようだから、ちょっと苦しいけど…あたしは兄貴のを再び口に含み、それを根元の部分…あたしの喉の奥まで達するぐらいまで深く咥え込んだ。 その瞬間… 「うおおお…っっっ…!!」 兄貴のがあたしの口の中で激しく震え、喉奥に精液を射精しているのが分かった…。 喉から逆流した精液があたしの口の中に溜まっていく…。 生温かくて…苦くて…ヘンな味がして…そして臭い…。 だけども嫌ではない精液独特の味と匂いが、口腔内に充満していく…。 「んぐ…んぐ…」 あたしは頑張って精液を飲み下そうとするが、兄貴のからは未だに大量の精液が放たれていて…とても飲み干せる量ではなくなってしまった…。 そして溜め込まれなくなってしまった精液があたしの口の端から溢れ出し…あたしの顎から首を伝い、あたしの服へと染み込んでいく…。 やがて放出が止まり、兄貴はあたしの口からアレを抜いていく…。 兄貴のはあたしの唾液と兄貴の精液で滑っていて、てかてかに光が反射していた…。 「…はぁ…はぁ…はぁ…」 漏れた分以外の兄貴の精液を何とか飲めたのはいいけど…あたしは身体が火照っていて、頭がボーっとして…何も…考えられなくなっていた…。 いかん…あまり気持ちがよくて、思わず桐乃の口に射精してしまった…。 桐乃はボーっとしたままだし…大丈夫か…? 「桐乃…大丈夫か…?」 「…あ…兄貴…」 何とか気が付いたみたいだな…。 「桐乃…一応確認する…。 俺…もう…収まりつかねーぞ…いいんだな…?」 口に出しちまったとはいえ、俺たちは兄妹だから…今ならまだ引き返せる。 俺は警鐘のつもりで桐乃に尋ねた。 しかし… 「いいよ…」 桐乃は拒絶しなかった…。 本当にいいのか…? と再度聞くと、桐乃は微笑みながら答えを返して来た。 「兄貴だから…いいよ…。 あたし、最初から…兄貴に…全てあげるつもりだったからさ…」 あ…やべ…。 この笑顔と答え…反則だろ…。 俺は桐乃が愛おしくなり…唇を塞いだ。 唇を離すと桐乃は一度俺を離れ、ゆっくりと…そして1枚1枚丁寧に自分の衣服を脱いでいく。 そして桐乃は恥ずかしながらも…俺の目の前で生まれたままの姿になった…。 桐乃の裸は…陸上競技で鍛えられて、さらにモデルをもやっている所為か…とてもバランスが取れた、とても美しい姿だった…。 俺が桐乃の姿に見惚れていると、桐乃は再びゆっくりと俺に抱きつき、俺に抱き抱えられるようにしてベッドに横たわった…。 「桐乃…」 「いいよ…きて…お兄ちゃん…♥」 俺たちはお互いに頷き合う。 そして俺は自分のを桐乃の秘所に充てがい… ズプ…ヌププ… 「んん…んんん…っっ!!」 少しずつ体重をかけて… 「い…痛…っっ…!!」 根元まで…全て挿入した…。 「桐乃…痛くないか…?」 俺は耳元で桐乃に囁いた。 だけど桐乃は涙を流していたが、嬉しそうだった…。 「少し…痛いけど…、それよりも…兄貴に挿入れてもらった…幸せの方が大きいかな…へへ♥」 くうぅ~~~…っっ!! すげー嬉しい事を言ってくれるじゃねーのよ、このお姫様は…。 「兄貴…動きたいんでしょ…? いいよ…♥」 挿入れたまま暫く動かずにいると、桐乃が求めてきた。 桐乃が痛がらないように気をつけて、俺はゆっくりと…抽送を開始した…。 「…ん…んん…っ…」 とりあえず一往復だけストロークしてみたけど…桐乃…眉を顰めて…痛そうだな…。 「桐乃…無理するなよ…。 あまり痛そうだったら…その…止めてもいいんだぞ…?」 「いいよ、そのまま…続けても…兄貴が気持ちいいなら、あたし…それで十分だからさ…」 桐乃…お前ってやつは…。 こんな状況なのに俺に心配かけまいとして…。 「今だから言うけどさ…あたし…小さい時からずっと…兄貴だけをみてきたんだよ…?」 桐乃…? 「幼い時にさ…『お兄ちゃんのお嫁さんになる』って言ったの…覚えてる…?」 ああ…覚えてるさ…。 「途中、冷戦状態になっちゃったけど…あたし…今でもずっと…あの言葉を心の中で温めてた…。 だから…今…夢が叶って…とても幸せだよ…」 桐乃は涙を零しながら、俺にこれ以上ない笑顔を向けてくれた。 「お兄ちゃん…好き…愛してる…」 桐乃…俺…本当に…幸せ者だ…。 小さい頃からずっと…俺の事だけを見ていてくれたなんて…。 なのにお前を長い間無視してしまって…本当に…申し訳ない…。 俺は感極まってしまい…瞳から…涙を零してしまった…。 その涙は少しずつ…少しずつ…桐乃の顔を濡らしていく…。 「桐乃…俺も…お前の事…愛してる…」 俺は心の奥底にあった本当の気持ちを、桐乃に伝えた。 「何があっても俺たちはずっと一緒だ…兄妹だとかはもう関係ない…。 俺が社会に出て生活できるようになったら、一緒になろうな…桐乃…」 そして…そのまま…俺はプロポーズした…。 俺の言葉に目を大きく開いた桐乃は…暫くして…とても嬉しそうな顔で…その瞳から大粒の涙を溢れさせた…。 「お兄ちゃん…」 「桐乃…」 俺たちは自然に顔を近づけて…唇を重ねた…。 そして俺はそのまま、抽送を再開した…。 「んんん…んん…っ」 俺の先端が、桐乃の膣内の壁のような所に当たり、その瞬間…桐乃の身体が激しく震えた。 どうやら子宮口に当たったみたいだ。 「お…兄ちゃん…っ…すご…気持ちいい…よ…っ」 抽送を繰り返していくうちに桐乃は痛みを感じなくなったみたいで、その代わりに呼吸が激しくなり、喘ぎ声を発するようになった。 そして結合部からは桐乃の潤滑液が溢れ出すようになり、さらに抽送がスムーズになる。 次第に俺の腰の動きが激しくなっていき、俺ももっともっと桐乃で気持ちよくなろうとさらに動きを加速させる。 「あ…ああ…♥ おにい…ちゃ…激し…♥」 「桐乃…お前の膣中…すげ…気持ちいい…」 「も…っと…もっと…激しく…して…♥」 「桐乃…桐乃…っっ!」 パンパンパンッ! という肌と肌が叩き合う音が室内に響き、俺と桐乃はお互いを激しく求め合う。 「だ…め…だめ…! あたし…イっちゃう…♥」 「俺も…そろそろ…出ちまう…っ…」 桐乃は両脚を俺の腰に回し、俺のが抜けないようにしっかりと咥えこむ形をとると、俺も桐乃の膣内に射精しようと激しい抽送を繰り返す。 俺もそろそろ限界が訪れようとした。 「桐乃…イクぞ…イクぞ…!!」 「きて…お兄ちゃん…♥ あたしの膣内に…出して…いいからぁ…♥」 「桐乃…っ」 「お兄ちゃんの…精液…全部…あたしに…ちょうだい…!!」 桐乃…桐乃…っ! 俺の忍耐は限界を超えて… 「桐乃おぉ…っっ!!!」 ビュルルルルルルッッ!! ビュルルルルルッッ!!! 「……………!!!」 桐乃の膣内に大量の精液を射出した。 「…! ………!! …………!!!」 桐乃は俺の射精を子宮口で受け止め、身体を痙攣させてイキながら必死になって声を殺し、俺の身体にしがみつく。 「き…桐乃……きりの…おぉ…っっ」 ビューーーッッ!! ビュルルルルッッ!! ビュプッビュプッ!!! 「はぁ…はぁ…お兄ちゃん…おにい…ちゃ…ん………っっ」 ビュクッ…ビュプッ… 長かった射精がやっと終わり…俺は脱力して桐乃に覆い被さった。 桐乃も俺の背中に両腕を回して、俺を受け止めてくれている。 お互いの身体にき、心地よい疲労感が漂っていた…。 「桐乃…」 「お兄ちゃん…」 俺たちは互いに見つめ、微笑み合いながら…自然に唇を重ねた…。 「幸せになろうな、桐乃…」 「うん…♪」 これからは大変な困難が待ち構えているだろう…。 だけど、俺たちはそれを乗り越える覚悟で結ばれた。 だから、何があっても俺たちは一緒に生きていく。 可愛い妹でもあり、愛する異性でもある桐乃と共に…。 「大好きだよ、お兄ちゃん…♥」 END
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/211.html
http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1281447547/492-495 世の中いろんな不幸があるが、中には珍しいのがあって「幸せな不幸」なるものが存在すると俺は思う。 例えば女の子との待ち合わせまであと10分ほど余裕があるのだが、その途中立ち寄った公園で野良猫にえらく懐かれ、膝の上に座った上にその場に落ち着いてしまいヘタレた空気椅子状態で 身動きが取れなくなってしまう、などがソレだ。(無論、この場合主人公は猫大好きである) 猫になつかれた幸せと、待ち合わせに間に合わなくなるストレスに板挟みにされた格好であるが、まぁ、今の俺のおかれた状況からすればそれはまだ微笑ましいといえる。 少なくとも待ち合わせをした女の子は多少遅れたくらいで臍を曲げるようなやつではないし、仮に臍を曲げて怒り心頭だとしても 缶ジュース一本で機嫌が直るお人よしなのだ。 その点、目の前にいる二人の美少女はやや性質が悪い。否、やや、というの寧ろ失礼に値するとすら思える。 片や警報ブザー常備で二言目には通報だの死ねだの(秘密だが俺は密かに彼女は鞄の中にスタンガンを忍ばせているのではないかと踏んでいる)ととても冗談が通じそうにないお堅い人間で、 約束を破りでもすればそれこそ仮に級友といえど命の保障すら危ぶまれるほどの危険度の高さを誇る。 もう片や危険度自体はさほど高くないものの、はその毒舌たるやこの上なしの古今無双(多分、桐乃をほんのちょっぴり凌駕してる)であり 口を開けば無尽蔵に放出される罵詈雑言に耐えうる精神の持ち主はこの俺を置いてほかにないに違いなかった。 それでも、とはいっても、所詮は年下である。 この俺様の手腕にかかればどうとでも料理できる…一人ひとりであれば。 つまりだ、今俺の置かれた状況を分かりやすく説明すると、寄りにもよって俺の知る限り最も危なっかしいこの二人の美少女とファミリーレストランでお食事ているのだ。 ちなみに俺はおごりでタダである。 …いやちょっとまて。 今もげろって言った奴いただろ?いたよな? 聞こえたぞおい!お前だよ、お前! 分かってないよ。お前は何も分かってない。 確かにさ、最初の文で例えた「野良猫に懐かれた」ってところにあたる「二人の美少女とお食事」ってのは嬉しいよ!? そりゃうれしいさ。健全な男子高校生なら誰だって悦ぶに決まってる。 だけどさ、不幸分が桁違いにデカイんだよ。もう、どうしようもないくらいに。 割合で言うと幸福1%対不幸99%。 板挟みってレベルじゃないんだよ。一方通行に押し流されてんだよ。 つか、注文して食事が来て今半分ぐらい食い終わってるんだけど未だに一言も喋ってないよこの二人! 「…うん、この新メニューの鬼おろしハンバーグけっこう旨いなぁ…」 「…」 「…」 ほらな!ほらな! さっきからずーーとこんなんだよ 時たま食器とナイフがカチャ、カチャと触れる音が居たたまれねぇよ! 俺は涙目で猛烈に湧き上がる嘔吐感に堪えながら鬼おろしハンバーグ定食を黙々と口に運んだ。 何かを入れていなければ、胃酸で胃に穴が開きそうだ。 何故こんなことになったのか。 実は、未だに俺も理解できていないのだが、起きたことを有りのままに話すと以下の通りである。 数時間前、俺とあやせは例のブザー事件により「不審者注意」なる看板設置された公園を避け、新たな会合場所を開拓しに町をさ迷っていた時だった。 俺のかぶっているキャップを見てあやせが自分のものであると気づき、俺がうなずいた。 「ああ、あの時のだ。悪いけどこういう状況だし、もうしばらく貸してくれないか?」 「お兄さんに貸した覚えはありませんが…まぁ、仕方ありませんね…」 渋々とうなずくあやせ。 そんなに俺にかぶられるのが嫌かとがっくりすると、何か閃いたかのようにあやせが此方を向いた。 「そうだお兄さん!」 「ん?」 「今から買いに行きませんか?帽子。」 「え?今から?」 「はい。」 立ち止まって改まるあやせ。 俺も足が止まる。 「実は私、前々からお兄さんにお礼がしたかったんです!」 「お礼って、…ああ、この前も言ってたな」 そういえばこの前電話で言ってたお礼って何だったんだろう? 「…以前のお礼はお気に召していただけなかったようですので」 「なぁ、その事なんだがこの前のお礼って一体なんだったんだ?」 むぅ、とあやせのほほが膨らむ。(←かわいい) 「もう其れは良いです!」 「え、そうなの?…ま、まぁ、それはともかく、お礼ってことは、お前が選んでくれるのか?言っとくけど俺はモデルが選ぶような帽子を買えるほど 金持ちじゃないぞ」 妹と違ってな。 「大丈夫です。値の張るものだけが良い物ではありません」 「つってもなぁ…」 煮え切らない俺の態度にあやせが少し苛立ちを含んだ目で俺をにらんだ。 「何かご不満でも?」 「いや、不満とかは無いんだが…、いまから東京に出るとなると時間が、な。」 まだ明るかったが、すでに午後の二時を回っていた。 「ああ、そんなことでしたか。大丈夫です。駅前に良いお店がありますから。」 「駅前?千葉駅の?」 「はい。以前仕事帰りに見つけたメンズショップなんですが、中々センスの良いものが多かったので」 ということは、態々俺の為に中に入って見てくれたという事のになるのか。 あやせは返事が遅い俺を不安そうに覗いてくる。 断る理由が無かった。といか、理由があっても断れないだろ、これは。 「じゃぁ、頼むかな。現役モデル様に。」 「はい、お任せください!」 …うっわ、笑顔超かわいいんだけど。 というわけで俺とあやせは駅前にあるというメンズショップ(狭い割には地上三階建てだった)に向かい、あーでもないこうでもないと悩みつつ(主にあやせが) お洒落でなおかつ学校にかぶっていけそうな灰色の網目の細かいニット帽を購入した。 ちなみに税込み3980円というお値打ち価格(だそうだ)なこのニット帽であるが、残念ながら俺はすでにその時全財産を殺虫剤に貢いでしまっていた。 そのことに気づいて金を銀行から下ろそうと店を出ようとする俺をあやせが呼び止め 「では私が払いましょう」 といって返事を待たずにあっさりと会計を済ませてしまった。 男前というかなんというか、いや、それ以前に年下の、それも中学生に帽子を買ってもらうとか凄い情けない。 というかそれ以前に中学生に薦められた店で中学生に選んでもらって中学生に払わせる高校生ってどうよ? …まぁ、いいか。 いいよな? だってあやせからのプレゼントなんだぜ?ふひひ…。 いいだろ? へへへ。 店の奥で店員がヒソヒソ言ってたって気にしない。気にしなーい。 …聞こえてんだよ…二言目には地味とか…別に貢がせてもねぇよ! 店を出て、猫耳が見えぬよう物陰に隠れ、早速買ってもらった帽子をかぶる。 「似合うか?」 「ええ、もちろん。出来れば服も新調したいところですが…さすがにそれは自分で払ってくださいね」 ジョークのつもりなのかあやせはふふふ、と笑った。 なんていうか、笑い方に感心して一瞬ほうけてしまった。 いや、正直言おう。見惚れた。 なんて上品な笑い方なんだろう。正に女性の笑い方、って奴だ。 俺の周りでそんな風に笑えるのははっきり言ってあやせだけだと思う。 例えば麻奈実はクスクスと小動物のようにわらう。これはこれで可愛いが、いまひとつ女性という感じがしない。 桐乃は論外でゲラゲラといかにも餓鬼っぽく笑うし、黒猫に至っては「ックックック」って何処の悪役だよお前は。 「――――あら、先輩?」 そんなことを考えてたからさ、思わず振り向いてしまったわけですよ。 罪悪感たっぷりな顔でな。 「く、黒猫ぉ!?」 「猫?」 俺の背後であやせが首をかしげるのが気配だけで分かった。 黒猫は制服姿でたった今裁縫店から出てきたと思しき布などが入った袋を持って立っていた。 そういえば夏コミが近い。 黒猫は俺とあやせを交互に見比べえて、なにやら考え込んだ後、邪悪な微笑をもらした。 「これはこれは高坂先輩ではありませんか。いかがしましたかこんな所で?」 あからさまに含みを持たせた敬語が怖いです。 超・怖いです。 「あ、えーっとこれはだな」 「あら?おかしいわね、そういえば今日田村先輩から『京ちゃん今日は風邪でお休みなの。昨日は元気だったのに、心配だなぁ…』 というお話を伺ったのですが、私の聞き違いでしょうか?」 「ぅぁ」 言葉に詰まる俺。 あやせが小声でつぶやいてきた。 「お兄さん、この方って以前ビックサイトで…」 「ああ、桐乃の向こう側の友達」 「なにかあらぬ誤解をさせたようですね…」 「………」 そうだよね。誤解だよね。 うん。わかってるよ。 「でもとても心配そうにしておりましたので聞き間違いではないと思いますが…では見間違いでしょうか? そうですよね、まさか風邪を引いて休んでらっしゃるはずの先輩が実はピンピンしていて何処の馬の骨と分からない女と仲良く駅前でデートなんて ありえませんよね?」 俺とあやせは二人して突っ込んだ。 「っちょ、馬の骨って」 「で、デートじゃありません!」 反応するのそっちかよ。 そこまでして否定しなくていいじゃん。 ぐすん。
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/360.html
http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1293190574/416-425 「何を見とれているのかしら」 玄関先で固まっている俺に黒猫はいつもの口調で言った。 寒空の中、大晦日も夜の十時半を過ぎたころ、玄関のベルが鳴ったので、 どうでもいいと思いつつ紅白をなんとは無しに眺めていた俺が玄関を開けると、 そこには綺麗な日本人形が立っていた。 いや、人形じゃない。 夜の黒に溶けるような黒い振袖。 その黒の中に、雪を冠した梅の花の柄が豪奢に流れている。 そして夜の闇に溶ける漆黒の艶やかな髪。 真っ直ぐ伸ばされた黒髪と、ほんのり薄紅色に火照った頬のコントラストは 思わず息を呑むほど美しかった。 まるで作りものみたいな。 でも、その生気は人形ではありえない艶をもっていた。 黒髪の襟元には白くてふわふわした、よくわかんないけど高級そうな襟巻。 帯は錦糸なのか絹なのか、妙にてかてかと光沢をもった、でも けっして安物ではなさそうな、そんな和装の美少女を目にしたら誰だって固まってしまうのも無理からぬ事だろ? 黒猫は言った。 「寒いわ、先輩。よろしければお家に入れてもらえないかしら?」 あ、ああ、もちろんだ。 「これは祖母の形見なの。自分で着付けをしてみたのは初めてなのだけど、 変ではないかしら?」 「変なことなんてあるもんか! その、すげえ綺麗だと思う。美人画みたいだって思ったくらいだ」 この時ほど現国を頑張っておけばよかったと思った時はない。 俺の情けない、ボキャブラリーのないアホみたいな褒め言葉じゃこの黒猫の姿の綺麗さ、美しさ、愛らしさを百分の一も表現しきれていない。 でもそんな稚拙すぎる俺の表現を聞いた黒猫はその薔薇色の頬の中の唇をほころばせて 嬉しそうに微笑んでる。 「な、何着飾っちゃってんのよ!?」 これは俺の後ろから現れた桐乃の叫び。 「あら、一緒に初詣に行く約束でしょう?」 と涼しい顔の黒猫。 「それって明日の事じゃん!?」 「新年の最初に詣でるから初詣と言うのよ。 その丸顔の中の脳はそんな事も知らないのかしら?」 桐乃が答えに窮していると、その後ろから母親が。 「お客様なの?どなたかしら」 そんな初対面の俺の母親に、黒猫は完璧な物腰でご挨拶をする。 「始めまして。夜分遅くに失礼します。私は桐乃さんの友人で、五更瑠璃と申します。 京介さんとはしばらく前からお付き合いさせて頂いてます」 と、和装の美少女が礼儀正しくご挨拶をしたらもう、うちの母親なんて 一発で攻略されてしまうのも無理からぬ事で。 「初詣のお誘いに来たのですが、桐乃さんと京介さんとご一緒に 二年詣りに参るお許しを頂けないでしょうか?」 「あらあらまあまあ」 そんなサザエさんでしか使わないような慌てた台詞で居間の父親に告げてる。 「あなた、京介の彼女さんがいらっしゃったのよ」 「そうか、では上がって頂きなさい」 ありがとうございます、という可愛らしい返事をして草履を脱ぐ黒猫。 見とれていた俺もはっと気付いて手を貸す。 きちんと脱いだ草履の向きを直した黒猫は、俺の手をとって立ち上がる。 そのとき黒猫の顔がすごく近くを通り、その形のよい唇にほのかに薄い赤い色の紅が乗っている事に気づく。 その唇に視線が吸い寄せられるのも自然すぎる事で、脛に桐乃のローキックが入らなかったら もしかしたらそのままキスしちゃってたかもしんない。 不服そうな桐乃をよそに、うちの居間のソファにちょこんと座ってる黒猫。 なんとも絵になるね。 母親は地に足が付かないくらい浮き足立ってて、変な質問ばかりしてる。 「お母さん!着付け手伝ってよ!」 二階から桐乃が母親を呼んでる。 「瑠璃ちゃん、うちの京介のいったい何処が気に入ったの?」 というアホな質問を投げかけていた母親がちょっと失礼するわね、と階段に消える。 「京介さんはとても妹思いで素敵なお兄さんですし、困ってる人を助けずにはいられない 優しさに惹かれました。気がついたら、好きになっていました」 そんないきさつ、俺も聞いたことねえよ! っていうか、親の前で真顔でそんな事言われたら照れるだろ! 黒猫、そういうのは二人きりのときに言ってくれ。頼むから! 「うちの愚息にはもったいないくらいの素晴らしいお嬢さんじゃないか。 瑠璃さん、不肖の息子ですがどうかよろしくお願いします」 わあ。父親は頭下げちゃってるよ! いたたまれない、父親と彼女との会話を横目で見つつも俺は黒猫にシグナルを送る。 頼 ?む ?か ?ら、 ?黙 ?っ ?て ?く ?れ そのメッセージに気付いたのか、黒猫は変な微笑みを浮かべながら、俺に言った。 「先輩? 先輩は今日のこの格好があまりお好みではないのかしら?」 酷い! 酷い黒猫! そんな事訊かれたら親の前でも言わなきゃいけなくなるじゃん! 「あ、あの、あんまり綺麗過ぎて、言葉になんないだけで、その、 すげえイイと思うぜ」 「すげえイイとはなんだ、京介! 折角瑠璃さんがこんな素敵な装いをして下さってるのに、 もっときちんと感想を言わないか」 ボスケテー!! なんで父親の前でそんな恥ずかしい真似をせにゃならんのだ! でもそう言えないのは父親には逆らえない悲しいところ。 「あ、あの、その、なんだ、くろ…じゃなかった、瑠璃…さんの、髪飾り、 黒猫の目みたいで、すげえ、じゃなくて、凄く、似合ってる、と思う…思います」 「ありがとう。…お父様、京介さんは口下手なところはあるけれど、 とても細かいところまで気がついて、優しい彼氏なんです。 言葉が足りなくても私の事をいつでも想ってくださってます」 親父! てめえ黒猫に「お父様」って呼ばれたとき一瞬鼻の下伸びただろ! 見逃さなかったからなチキショー! 黒猫も黒猫だ! いくらなんでもネコ被り過ぎだろ!! そう心の中だけで思ってると、騒々しい音が階段を降りてくる。 桐乃。 真っ赤な振袖はお前に似合ってるけど、だからと言って腰に両手を当てて俺を睥睨するように ガンを飛ばすのはどうかと思うぞ。 そんなこんなで、右腕に黒猫、左腕を桐乃に取られたまま初詣に出掛ける。 俺の頭越しに冷戦の火花が散ってるのは気のせいじゃないだろうな。 「奇襲でポイント稼いだつもり?ホント性格悪いったらありゃしないわよこの腹黒猫が!」 「あら、先輩はこの格好がいたくお気に入りのようだけど」 「ふん!たかが振袖くらいでいい気になるんじゃないわよ!」 「その明るい茶髪に赤の振袖はどうかと思うわよ。それに帯の位置が上過ぎる気がするわ」 「悪かったわね! 着物が似合うのは胴長で胸が小さいド日本人体型だけなんだから! どうせあんたみたいなナイ胸女だったら帯の位置がしっくりくるんでしょうけど」 「あら、言ってくれるわね? 言っておくけど、貴女の兄さんはこの胸の大きさが好きだ、って言ってくれたのよ?」 「はん! ?どうだか。コイツのベッドの下の本を見たことあるの?! 馬鹿みたいにでっかい おっぱいのグラビアばっかりなんだから!」 いつ見たんだ! って言うかそんなもん漁るんじゃない! 「どういう事かしら?」 俺の右腕に絡みついた黒猫から、なんとも言えない冷たい波動が伝わってくる。 「ち、違うんだ。アレは以前、赤城に貰ったモンで、お前と付き合い始める前にー「先週増えた雑誌もでかおっぱいの写真満載だったっけね~」 冷たい波動が三倍くらいの量で俺の右半身を凍らす。 「違うんだ、俺が好きなのは、俺が見たいと思ってるのは、 お前のおっぱいだけなんだ、信じてくれ、黒猫!!」 瞬時に凍てつく波動は消え去り、恥ずかしそうにふるふると震えてる黒猫の体温が俺の右半身を包む。 しかし、今度は左半身に焼け付くような怒りの放射熱が浴びせられる訳でーー どうすりゃいいんだ!? 京介が困惑したまま終わる つづかない
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/492.html
http //pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1303394673/883-913 メールから始まった加奈子と俺の関係。 先日電話と言うもう一つのステップを踏み、 加奈子と俺の関係はこれ以上無いぐらいに進展したかに見えた。 ・・・だが。どうやら俺たちはもっと関係を近づけられるらしい。 あの電話があった日以来、俺たちは主にメール、たまに電話で連絡を取り合っていた。 その期間は決して長い物ではなかったが、お互いをより良く知るには充分だった。 今まで知らなかったことを知り、理解と仲を深めてきた俺たち。 もう俺の中では、ただの妹の友達ではなくなっているのかもしれない。 加奈子の仲の俺は、いったいなんなんだろう? アイツの仲では、友人の兄のままなのかもしれないな・・・。 と、こんな気の滅入る話はやめにしよう。 とにかく俺たちは、これからとんでもない関係の発展を遂げようとしている。 メールから電話と来たら、もう決まってるよな? ついでにこの話を持ちかけてきたのは、またまた加奈子からである。 場所は近所の街。 待ち合わせ時間は昼の1時。 そう、今回のイベントはデートである。 デートって言うのには語弊があるかな 別に両方が好き合ってるわけでもねーし。 ことの発端は昨日。 もはや恒例となったメールの中の一通に、こんな文字が並べられていた。 『そうなんだよなー(←前のメールの返信なのだ) てかさ、明日ってなんか予定入ってたりする?』 さすがに鈍い俺でも、ここでは何か勘が働いていた。 あぁ、恐らく明日は加奈子と行動することになるだろう、と。 ちなみに俺の予定は運良くその時点で空であった。 赤城を誘ってどこかへ行こうとも思っていたのだが、 女子中学生からお誘いがあったのでは、ヤツの存在は爪楊枝と同等になる。 その後、俺の予想通り加奈子からのお誘いがあり それを俺が承諾したことによって、加奈子と俺との初お出かけが決まったのだ。 そして今は朝の10時。 どんな服を着ていこうか鏡の前で試行錯誤したり 念のためデートプランを立てておいたり。 受験を間近に控えているとは思えぬ行動で時間を潰す俺。ちょっと痛い。 しかしちょっと時間が余ったな・・・。 よし、ここは受験生らしく勉強で時間を潰すか。 ・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・・・・ なんだ、以外にに集中できるもんだな。 もっとデートの事にしか頭が回らないと思っていたんだが。 恐ろしいほど公式やらウンヌンカンヌンが頭に入ってきやがる。 なんでだろうな? アドレナリン?アドレナリンなのか? いつにない早さで俺はペンをノートの上に滑らせていた。 昼の一時まではまだ時間がある。 俺は部屋に掛かっている時計をチラッとみて、再び視線をノートに・・・ いや時間ねーよ!!?もう12時45分じゃねえか! やばい、非常にヤバイ。勉強に集中しすぎて、何の準備もしていない。 今から準備をして、時間に間に合うだろうか? ここから待ち合わせ場所までの距離は徒歩5分。それを走って2分と仮定しよう。 いや考えてる暇はない!最初のデートで遅刻はバッドエンド直行だ! そうして俺は、人生で一番早いと言っても過言ではない早さで、加奈子との集合場所に向かうのだった。 ****************************** 周りの空気を巻き込んで、俺は走っている。 加奈子からお誘いがあったってのに、勉強に没頭しすぎて遅刻しそうだったからだ。 家を出たのは12時55分ぐらいだった。ギリギリ間に合うか? よし、待ち合わせ場所に着いた。時間は12時58分。 時間的には間に合ったけど、もっと早く来るべきだったな・・・。 加奈子のヤツ、怒ってるかもしれない。 俺は慌てて加奈子の姿を探す。が、俺の探し人はすぐに見つかってはくれなかった。 場所を移動してみても、首を回してみても、身長の低い彼女は見つからない。 おかしいな・・・。待ち合わせ場所を間違えたか? とりあえず、もう少し探してみよう。もしかしたらアイツが遅れたのかもしれないし。 ――――15分後 いつまでたっても姿を見せない加奈子。もしかしたら加奈子の身に何かあったのかもしれない。 そんな不安が俺の脳をよぎり、電話でも掛けてみようかと迷いはじめたころ。 今回の待ち合わせ場所に向かって走ってくる小学生のような姿が見えた。 15分という心の準備をする時間があったにも関わらず、俺の心臓は今にも爆発しそうだ。 認めたくないけど、かなり緊張してしまっている。 そんな俺の緊張を知らない加奈子は、スピードを緩めることなく俺に向かってくる。 そして、俺と会話が出来る距離で立ち止まって、今にも倒れそうな声で 「ご、ごめん。待たせた?」 と、俺に問いかける。加奈子の声から感じ取れる反省の色に、 少し脳の奥底にあった怒りの感情は静かに消え失せていった。 「正直待ったけど、別に気にしてねーよ。ほれ、息整えろ。」 膝に手をついて息を切らしている加奈子は、俺に一言詫びて息を整えはじめる。 その間も俺の心臓はとんでもない鼓動の打ち方をしている。 それにしても・・・。メールや電話で話すのとは違う感じだな。 やり取りにはなれたつもりでいたが・・・それが今全く役に立っていない。 声だけを聞くのと顔をみながら声を聞くのは大違いだ。 「ふぅ。もう大丈夫。ワリー、遅れちまって。」 「さっきも言ったろ気にしてねーって。」 第一俺も遅刻しかけたしな。内緒にしておくけど。 でも何で遅刻したんだ?この時間なら寝坊ってわけでもないだろう。 「どんな服着ていこうか迷ってたら、いつの間にか時間が過ぎてて、 もうスッゲー慌てて来たの。加奈子から誘ったのに遅刻はヤバイからナ」 まるで俺の心を読んだかのような話題だった。 それにしても、俺と同じようなことしてんだな、こいつ。 俺と会うだけなのに服に悩んだりして・・・。 「じゃあ、とりあえず行くか。どこ行くか決まってんのか?」 「うん。とりあえず、加奈子の買い物に付き合えヨ。」 「・・・よし、そうすっか。」 本当にこいつは、桐乃みたいなやつだな。 可愛い顔して俺を荷物もち程度につれまわしやがって・・・。 「なんだ?今日俺は荷物持ちとして同行させられてんのか?」 「まあそれもあるけど。一人より二人の方が楽しいっショ?」 それは俺がついていかなくても桐乃達を誘えばよいのでは・・・。 そんな質問が思いついたが口に出さなかった。 そして今、俺たちは隣に座り合って電車に揺られている。 今回の目的地は駅二つ分ぐらい離れた割と近くの街だ。 近いとは言え、こいつの隣に座るのは緊張するな・・・。 今は席が詰まっているので、左に加奈子右に知らないおじさんという状況だ。 知らないおじさんに身体を密着させるのは気が引けるので、どっちかというと加奈子寄りに座っている。 そんな状況だから、腕に加奈子の感触があるわけですよ。 女子中学生独特の鼻につく甘い匂いと、加奈子の腕の感触がお互いを高めあって 俺の理性をぶっ壊そうとしてきやがる。恐ろしい娘! 俺が理性を保つことに奮闘していると、腕に伝わる加奈子の感触が急に強くなった。 慌てて左に目をやると、なんと加奈子は俺に身体を預けて駅前で買った雑誌を読んでいたがる! も、もう勘弁してくれ・・・。自分が自分でなくなっちまうみたいだ。 そもそもお前は男に対してそんなに無防備でいいのか?男慣れしてんのか? 。男慣れといえば、加奈子って彼氏出来たことあんのかな? この前は俺の彼女の話で終わっちまったから分からなかったけど・・・。 考え出すと気になるな。聞いてみるか。 「なあ、加奈子。」 「んー?どうしたー?」 雑誌から目を離さず俺に応える加奈子。電車内なので双方ちょっと小声だ。 「お前ってさ、彼氏とかできたことあんの?」 「はあ?ねーよ、そんなん。でも出来ねーわけじゃねえよ?」 まあ、それもそうだろう。 加奈子も一般人から見たらかなり可愛いほうだしな。 桐乃と同様、作ろうと思えばいつでも彼氏を作れる状況にいたっておかしくない。 「ただ、周りに加奈子に相応しい男がいねーだけで。同い年はガキくせーし。」 周りって言うと、クラスの男子とかそんなんだろうか? 桐乃と同じでやっぱこのぐらいの年頃だと、年上に興味を持っちゃうんだな。 「でもお前、前にナンパ待ちしてたって言ってなかったか?」 「あんなん食いモン奢らせるために待ってたに決まってんだろうがヨ。 知りもしないヤツの女になるなんてサラサラごめんだね。」 そこで加奈子は初めて雑誌から目を離し、俺の方を見る。 そして口角をニヤッと上げたかと思えば、こう続けた。 「なに何~?オメーもしかして嫉妬でもしてんの~?」 「バッ!別にそんなんじゃねーよ!」 「ふーん。じゃあそういうことにしといてやんよ。」 で、また雑誌に目をやる、と。 なんだかこいつ俺の扱いに慣れてね?まるで桐乃みたいな・・・。 「おいおい、女の子と二人の時は別の女のこと考えんなヨ。」 「お、オイお前!人の心を勝手に読むな!」 「いや、思いっきり口から出てたじゃネーか。」 どうも俺は心の内を隠すのが度へタみたいだな。 これはもしかして加奈子の好感度下げちゃった? そんなエロゲー脳を働かせていると、電車が俺たちの目的地で停まった。 どちらが声をかけるわけでもなく、俺たちはほぼ同じタイミングで席を立ち電車を降りる。 さて、こっからが本番だ。 せいぜいお姫様のお使いを真っ当するとしますか。 ********** おれは今、某ファッションショップにいる。 俺は桐乃と違いファッションセンスもないし、男だし。 ここでは多分こいつの役にたつことなんてできないだろう。 と、加奈子い言ったところ 『オメーにファッションセンスなんて期待してねーヨ。 ただ、一般男子としての感想を聞きたいってだけ。』 ってことなんだそうだ。 一般男子て。俺なんか所詮「可愛い」とか「似合う」とかしか言えねーぜ? それでもいいんならそれでいいけどさ。 で、俺は今試着室の横で加奈子の帰りを待っている。 女物しか置いていない場所の試着室横で、な。 きっと変態にしか見えないだろう。しょうがねえよ。変態だもん。 「ン、選んできたぜ。覗くんじゃネーからな!」 数着の服を手に提げた加奈子のおかえりだ。 俺はこれからこの服を着た加奈子の評価をすればいいらしい。 加奈子のことだから大丈夫だろうけど、もし圧倒的に似合わなかったらどうしよう。 正直に似合わないって言ったほうがいいのかな? 桐乃の時はこんな心配しなくて良かったのに・・・。女の子と出かけるのって、思ってたより辛い。 「お待たせ。ど、どうよコレ」 ・・・俺の心配は、無駄だったみたいだな。 正直に言おう、超可愛い。 俺はファッションに詳しくないから、アレがこうだとは言えないけど。 見えてるままに言うと、超可愛い。 「ど、どう?もしかして似合ってなかった・・・?」 「い、いやいや!超似合ってる!超可愛い!」 むう、いつもとのイメージの違いに唖然としてしまった。 俺はファッションに詳しくないので、 でにむとか、ぱーかーとかそんなんは分かんねーけど とりあえず似合っている、それは確実に本音だ。 誰かこれを絵にしてくれないだろうか・・・。 「そ、そう。まあ、当たり前だけどな!」 そんな口を叩きながら無い胸を撫で下ろす加奈子。 コイツも、もし似合わないって言われたらどうしようって思ってたのか? ・・・俺が思ったよりも可愛いところがあるやつなんだな。 ******************* その後、服を購入した俺たちは店を出る。 もちろん、先ほどの服が入った袋は俺の腕にさがっているが。 「で、次はどこ行くか決まってんのか?」 「ぶっちゃけさ~、急いできたから加奈子昼飯食ってないんだよね~。」 そういえば、俺も昼飯食ってなかった。 「俺も昼飯がまだなんだ。なんなら今から食いに行くか?」 「あ、いいの?じゃあそうしようぜ!」 てなわけで、次の俺たちのイベントは『一緒にご飯を食べる』になった 「決まったのはいいけど・・・。どこに食いに行くんだ?」 「京介はどっか行きたい所とかねーの?」 「特に無いな。お前はどっかないのか?」 加奈子は俺の問いに、少し考えて答える。 「あるっちゃああるけど・・・」 「じゃあ俺はそこでいいよ。あ、でも高級レストランとかはやめろよ?」 「そんなんじゃねーって。あそこなんだけど。」 加奈子は俺たちから向かって右側にある店を指差す。 なんだあれ・・・。カフェにしては外観が和風な・・・。 でもまあ、予想外の展開が無い限り大丈夫だろう。あそこにするか。 「お前が行きたいんなら、あそこにしようぜ。」 「マジで?あ、ありがとうな」 加奈子から素直にお礼が飛んでくる。 初めて会ったときに比べて、なんか反応が変わってきているのは気のせいだろうか。 なーんて疑問を抱きながらも、俺は加奈子が行きたいと言う店に向かうのであった。 「「「よく参られました、殿、姫。」」」 よ、予想外の展開キターーー! なんだ此処は! 店員が全員忍者の格好をしていて、男を「殿」女を「姫」と呼ぶ きわめて異例な状況だ。こんなカフェが京都四条以外に存在しているとは・・・。 「いやー。この忍者カフェ、一回入ってみたかったんだよねー。」 「入ってみたかったって・・・。ここ案外高級そうだぞ?」 「だーいじょぶだいじょぶ。入ってみたかっただけで量は食べないから。」 本当だろうな・・・。 「とりあえずなんか頼もうぜ。加奈子、スーパー腹減ってんだよね。」 「お前、さっき服買ってあんまり持ち合わせないだろ?食事代ぐらいだしてやるから、なんか頼めよ」 「え、いや悪いってそれは・・・。」 一応拒否するんだな。こう言う所以外としっかりしてるな、コイツ。 でも俺がお代持つって言ってるんだから、この厚意ぐらい受け取ってくれないかな。 「いいからいいから。」 「・・・。そっか。これ断ったら京介の顔がねーもんな。お言葉に甘えさしてもらうよ。」 コイツと関わり出してからと言うもの、何度か加奈子に心を読まれているかのような出来事が起こっている。 今回もそうだ。なんだってコイツはこんなに人の気持ちを理解できるんだろうか。 俺たちは各自頼みたい物を頼み、料理が来るのを待っている。 待っている間、加奈子にこんなことを聞かれた。 「つーか、オメー本当に今まで一人、しかも2,3週間しか女と付き合ったこと無いの?」 「あん?ねーけど・・・。なんでだよ?」 「いや、やけに勘が言いというか・・・。こう、行動が女の子の心を刺激すんだよね。」 なんか、デジャヴ。 黒猫とデートをしたときも、こんなことを言われた気がする。 俺としては、やりたいことをやってるだけなんだがな。相手が女の子だと下心も1割ぐらいあっけど。 「別に、俺は思ったことをやってるだけだよ。相手が男でも、な」 俺が夏休み中、御鏡にしてやったように。 「ホモ?」 「違う!」 瀬菜と離れてるときぐらい、俺をホモにするのはやめてくれ・・・。 「ほんと、お人よしだな。京介って。人に世話してないと生きていけないタイプ?」 「はは、そうかもしんねーな。」 こいつとの会話にも、大分慣れてきたもんだ。 この雑談で時間を潰したからか、料理は思ったよりも早く俺らの元に届いた。 「いただきますっと。」 「健やかに食べたまへ、加奈子君。」 冗談を交わしつつ、俺たちは食事を口に運ぶ。 ここで一つ驚いたことがある。加奈子、食うペース速すぎ。 俺の一口と加奈子の二口のペースはほぼ比例しているといってもいいだろう。 「お前な・・・。女の子なんだからもっとおしとやかに食べられないのか?」 「ん?べも、あんばびびらば・・・」 「口に物を入れながら喋るなよ。せめて飲み込んでから・・・」 「でも、あんまり知らない人の前ではちゃんとゆっくり食べてんだぜ?」 飲み込むのも早いんだな。サイヤ人かコイツは。 「目の前にいるのが京介だからな。気が緩むと、食べ方が汚くなっちゃうんだよね。」 「桐乃にもよく、注意されちまうんだけど・・・。そんなに汚い?」 「正直、女の子っぽくねーよ。」 それにしても、もう俺には気を許してくれてるんだな。 それはそれで、悪い気は全くしないんだけど。 「でもしょうがねーだろ?これが加奈子なんだもん。」 「まあ、無理して自分らしさを消しちまうよりかはいいんだろうけどさ・・・」 「じゃあ、いーじゃん!モグモグ」 はあ、全く。 結局その後も加奈子の食べるペースは変わらず 俺の2倍ぐらい量を食べていた加奈子と俺が間食した時間が同じなんていう 奇天烈なことが起こったりしたな。こんなに食ってるから腹がぷにぷになんじゃねーの? 「ふー。お腹一杯。あ、ごちそうさま~」 「はいはい、お粗末さまでした。」 俺が作ったわけじゃないけど、なんだか気分でそう返す。 加奈子が店を出て、俺はレジに向かい代金を払う。 「合計で21000円になります。」 。ホーリーシット! 加奈子のヤツ・・・どんだけ食うんだよ! これじゃ高級レストランと変わらんじゃないか。 俺の財布は、今日からものすごく寒くなりそうだ。 お財布から逃げていったお金に未練を抱きながら、俺は店を出た。 ************ 「はぁ~、おいしかったぁ!また行きてーな。」 「今度は、桐乃達と行くとか、いいとおもうぞ。」 俺の財布にはとっても良くないから。 遅めの昼食をとった俺たち。時刻は3時30分。 「よし、次はどこ行くか決まってんのか?」 「そうだなァ、次は・・・」 加奈子が次の目的を口にしようとしたとき、 明らかに運転がヘタクソなバイク(ペーパードライバーか?) が俺たちに向かって走ってくる。 なんか怖いな。俺たちの前でバランスを崩されでもしたら・・・。 「加奈子。あのバイクに気をつけ――って!」 早速バランスを崩しやがった! ハンドルにそんな荷物掛けるからだよバカ! 「あ、あわわっ!」 「か、加奈子!危ないっ!」 俺は加奈子の服を地面に置き、加奈子をかばいに入る。 そして、身体に衝撃が走った。 ************ 「ご、ごめんなさい!大丈夫でしたか?運転に不慣れなもので・・・。」 「クソドライバー!オメー、前から人が来てんだから気をつけろってんだ!」 「・・・京介? だ、大丈夫?」 「あ、ああ。なんとか大丈夫だ。」 今のは死ぬかと思った。 向かってきたバイクから加奈子を守るため、俺は加奈子に体当たりにも似た回避高度をとらせ、 なんとかバイクを避けた後、地面に叩きつけられた。超痛い。 「大丈夫ですか!?すいません、運転にはまだ慣れてなく・・・て?」 「いや、大丈夫ですよ。こちらの不注意でもあった・・・し?」 沈黙。 「あ、赤城ィィィィィィィィィィ!」 「こ、高坂ァァァァァァァァァァ!」 なんと諸悪の根源は友人、赤城浩平だった! そりゃあ運転下手だわな!夏休みに免許とったばっかだもん! 「何?京介?知り合いだったの?」 「ああ、ゴッテゴテの知り合いだ。気を遣って大丈夫だって言ったのが勿体ねーや。」 「そう・・・。それはいいけど、さ。」 「ん?どうした?」 何で顔赤らめてんの?どっか痛めたか? 「あのサ・・・出来れば。は、早くどいてくんね?恥ずかしいし。」 「え?」 え? ・・・えええええええ!? オーマイガッ!俺はなんてことを! 簡単に説明しよう、加奈子に体当たりしたままの体制である俺は 今現在加奈子に覆いかぶさるような体制になってしまっていた。 「わ、悪い!すぐどく!」 俺はすばやく加奈子の上から飛び退く。 「まじでスマン!本当に故意じゃなかったんだ!」 「わ、わかってるっつーの。別に気にしてないし。」 照れ隠しも入って、俺たちはすばやく立ち上がる。 が、立ち上がった瞬間俺の右足に痛みが走る。 「痛ってて・・・。」 「おい、大丈夫か高坂」 「大丈夫だけど、忘れるなよ?お前のせいだぞ?」 迷惑なヤツだぜ全く。 「京介、本当に大丈夫なのかヨ?」 「まあ歩くのに支障は無いけど、長時間歩くのはきついかな。」 「・・・はあ、しょうがネーな。今から京介の家戻るか。そんな足じゃデートってわけにもいかねーし。」 え?俺の家?加奈子が? ・・・。まずいぞ、今日は桐乃が家に・・・。 「もしもし、桐乃?オメーの兄貴が怪我したから、送り届けるわ。うん」 行動が早い!しかも桐乃にデートの件は隠さないのかよ! 電話で口論になるのでは・・・と思ったのだが。加奈子はすぐに電話を切る。 「じゃ、行くぞ。」 「き、桐乃はなんて?」 「ぶぇーつに?待ってるって言ってたよ。」 あれ、案外普通なんだな・・・。 油断は出来ないけど、とりあえず今は加奈子の言葉に甘えよう。 「じゃあ、言葉に甘えて一旦家に戻ることにするよ。」 「じその荷物は俺が高坂の家まで持っていくよ。家の前でまってるからな」 「ああ、悪い。帰りにまた事故起こすんじゃねーぞ?」 「大丈夫だよ。そもそもさっきの事故は、瀬菜ちゃんのホモゲーをハンドルに掛けてたのが原因だからな。」 赤城は「同じ間違いは二度と犯さん。」と言って荷物を二台に乗せて走っていった。 運動神経はいいほうなのに、バイクの運転はさっぱりなんだな。 こんなんならラブドール買っといたほうがよかったんじゃねーの? 「じゃ、行くか。歩ける?」 「歩くくらいなら大丈夫だって。それに、お前に肩を貸してもらうわけにもいかないだろ。」 「それもそうだなー。とりあえず、電車乗るか。」 俺たちは行き道に乗った電車に乗り、俺ん家から最寄の駅に向かう。 行き道はあんなにオロオロしていた電車の中も、今となっては心地いい。 「なあ、京介、ありがとうな。」 「ん?それはなんのお礼だ?」 「助けてくれたことの、お礼。京介が加奈子に体当たりしてくれなかったら、 バイクが加奈子に直撃してたかもしれないじゃん。それに足まで痛めて・・・」 「別にいいよ。足なんてかすり傷程度だしな。」 「それに、目の前で大切な物が傷つくのを見るのに比べたら、なんてことねーよ。」 そこで加奈子は顔を赤らめてうつむいてしまった。 やっぱりちょっとキザ過ぎたかな? 「この、乙女心殺しめ。」 そんな加奈子の声と同時に、電車は目的の駅へ到着する。 「ああ、帰ってきた。3時間の旅を終えてマイタウンへ帰ってきたんだ。」 「はいはい、馬鹿なこといってねーで京介ん家行くぞ!」 加奈子にあしらわれるだと・・・? **************** それから、家の前で瀬菜と電話をしながら俺たちを待っていた赤城と合流し、家へ入る。 さて、どう出る・・・。我が家の隠れた悪魔(桐乃な)! かなり身構えてドアを開けた俺だったが、俺を出迎えたのはお袋だった。 「た、ただいま」 「おかえり、京介・・・アンタ、どうしたの?車にでも轢かれた?」 「そんなんじゃ足引きずるだけですまねーよ!?色々あってな。」 どうして家の女共は 怪我=交通事故 なんだよ? いや、今回はあながち間違ってないけども! むしろ轢かれればいいのにってこと?そうなのか?泣くよ俺? 「「おじゃまします。」」 「あらあら、浩平君と加奈子ちゃんじゃない。今日はまた変わったメンバーね?」 「加奈子ちゃんは桐乃に用事?なら二階に―」 「い、いえ。今日は京介君に用がありまして。」 「あらそう?なら、京介の部屋は桐乃の部屋の隣よ。どうぞ上がって。」 お袋、赤城にも構ってやってくれ。 いやまあ小学校からの付き合いだから当たり前みたいになってるのは分かるけども。 加奈子だけに絡んでニヤニヤしながら俺を見るのはやめてくれ! 「はあ、全くお袋のやつ・・・」 「とりあえず、部屋に上がろう。話はそれからだ。な?高坂。」 「赤城、なぜお前が仕切る!」 コイツ・・・友人をバイクで撥ねかけといて、図々しいやつだ。 「あ、加奈子。やっと来たんだね。」 ら、ラスボスが出やがった! 「ヨ、桐乃。悪いな、急に着ちまって。」 「いいのいいの、加奈子とせなちーのお兄さんは兄貴をつれてきてくれたんだから。」 「ま、とりあえず兄貴の部屋に上がってよ。ここの階段上がったとことだし。」 おい、俺の部屋は公衆トイレか? 鍵が無いとは言えフリーすぎるだろ。 桐乃と加奈子、俺と赤城が別々に話しながら階段を上る。 そして4人で(人口密度が高いが)俺の部屋へ入り、一息。 「ここが京介の部屋ねー。やっぱ想像通り地味だな。」 「るっせーよ。いいだろ、別に。」 にして、デートから部屋へ上げるのは間隔が開くもんだと思ってたが、まさかの一日で両方を済ませてしまうとはな。 「じゃあ、兄貴は怪我の手当てするからリビング来て。」 「別にいいよ。大した怪我でもねーし。」 「いーいーかーらー!早く来る!」 俺は桐乃に引っ張られて部屋を出る。 痛い、足痛いって! 「桐乃、加奈子も行こうか?」 「いいよ、すぐ終わるから。」 そう言って加奈子を部屋に残す。 まて、俺と桐乃が抜けたら部屋に残るのは赤城と加奈子・・・。 スーパー接点のない2人の気まずい空気が流れてしまう! 許せ、加奈子。すぐ戻るから。 「はい、そこのソファに座って。」 ここ最近で妹に2回怪我の治療を受けている。なんだこの状況は。 妹の手荒な治療に俺が悶絶していると、桐乃は俺の足にクルクル包帯を巻きながらこう聞いてきた。 「ねえ・・・。アンタ今日加奈子とデートしてたんでしょ?」 「べ、別にデートとかそんなんじゃねえよ!」 「でも加奈子からはデートって聞いたモン。」 加奈子のヤツ・・・。 電話で桐乃と俺の話したじゃん! 「デートに付き合うくらいなら、もしかしてアンタ加奈子のこと好きなの?」 「・・・。」 どうなんだろうな? ここ最近加奈子と関わってきて、俺の気持ちに変化があるのは分かっていた。 でもこれは好きっていう感情なんだろうか。黒猫へ向けていた感情とはまた別の感情。 それは恐らく、スタート地点の違いからだろう。 黒猫の場合元々俺とも直接つながりを持った人間だが、加奈子は違う。 あくまで始まりは桐乃とあやせからのつながりだ。 どうして、こんなに迷っちまうんだろう。 多分、大切妹の友達って言うイメージを消しきれていないからだ。 妹の嫉妬心を知ってしまった以上、妹の友達を好きになるのは抵抗がある。 ・・・はあ、俺って本当に最低な人間なんだな。人一人を素直に愛せないなんて。 「そんなに悩むならいいよ。」 妹に呆れられてしまった。 そりゃそうだろうな、こんな兄貴だもん。でも・・・ 「もし、俺が加奈子のことを好きになったとして。お前はどう思うんだ?」 「そんなん、決まってるじゃん。黒猫の時と一緒だよ。」 「アタシはアンタの一番でいたい。だから遠慮せずアンタの恋を邪魔する。」 「おまっ!それは卑怯だろうが!」 「卑怯なんてないもーん。アタシの好きな人が他にいないのに、アンタだけ出来るとかありえないし。」 全く・・・当分俺の恋愛は上手く行かなさそうだな。 「でも、加奈子がアンタのこと好きってなら、形だけでも受け止めるしかないよね。」 「お前は、それでいいのか?」 「よくない、良くないよ。でもしょうがないでしょ?」 そういって笑う妹は、どこか儚げで・・・。 思わず見とれてしまいそうだったが、その顔に加奈子が被ってすぐ消える。 恐らく加奈子は、桐乃の言うとおり俺に好意を抱いている。これはさすがに俺でもわかる。 ここで俺が桐乃を選んでしまったら・・・。加奈子に同じ表情をさせてしまうだろう。 俺はどっちにもそんな表情をして欲しくはないんだ。 どうすれば、二人ともいつまでもわらっていられるんだろう。 つーか俺なんでこんなこと考えてんの? ・・・。 それは多分、俺が加奈子のことを 「ハイ、治療お終い!」 バッシーン! 桐乃が俺の患部を思い切り叩いた。 「痛ってえ!お前、二回目だぞ!」 「気にしない!ホラ、アンタの部屋戻るよ。」 そうだ、忘れてた。俺の部屋に流れているであろう気まずい空気を早く解かねば。 俺は桐乃と並んで、階段を上がる。ちょっと足痛い。 そして、部屋のドアノブに手をかけたとき、こんな会話が耳に入ってきた。 「う、うわ!本当に眼鏡ばっかり。京介、こういう趣味だったんだ。」 「だから言ったろ?高坂の趣味は偏ってるんだよ。」 「えーと、俺が金を出したAVは・・・お、コレだ。」 気まずい空気は流れていないが、他の空気が流れている気がする。 恐らく、今は俺の秘めたる部分が今あらわになっているんだろう。 ハッハッハ!そんなことをしたって俺がとる行動は決まってるぜ? 俺はドアを開け放って、こう叫ぶ。 「お願いします。返してください!」 もちろん頭を床にこすりつけながら、な。 ********** 結局その後、コレクションを取り返した俺は部屋で皆と一服している。 桐乃のプリクラだけ他の場所に移しておいてよかった・・・。 「じゃあ、俺は帰るわ。高坂、早く怪我治せよ。」 「おう。怪我させたのはお前だけどな。」 俺たちは挨拶を交し合う。そして赤城が俺の部屋からいなくなる。 現在俺の部屋には、見た目が超可愛い中学生が2人いる。 なんだこの状況は・・・。 「アタシお菓子持ってくるから、ちょっと待ってて。」 次は桐乃が退室。 現在超可愛い中学生が隣に一人。 距離が近い。っていうか、腕当たってる。 こいつ、電車と違って広いのに何でこんなに密着してくるんだ・・・。 で、目が合う。 ・・・。 ・・・・・。 目を見詰め合ったまま、沈黙が耳元で騒ぐ。 何だこの間。ターニングポイント? いつのまにか手が当たってるんだけど! ここはもう・・・行くしかないのか! 「加奈子」「京介」 oh... まさかの相打ちだと!? 「ど、どうした?」 「京介こそ。」 そしてまた沈黙が訪れる。 なれたはずだった加奈子との間に気まずい空気が流れる。 そこでタイムアップ。桐乃が入室。 「ごめん、待った?」 「べ、別にまってねーヨ。」 「そ?じゃ、遠慮なく食べてね。」 桐乃はそういうと携帯を弄くりだす。 それにしてもさっきの状況はなんだったんだろう。 もしかして何もしなかったのはまずかったか? 早くも先ほどのことを後悔していると、俺の携帯にメールが届いた。 『From,桐乃 この、意気地なし!』 全く、コイツには頭が上がらないよ。 俺はこれからのことを考え、加奈子は食い、桐乃は呆れる状況がしばらく続いた頃、 「じゃあ加奈子も帰るわ。京介、今日はありがとうな。」 長かった今日のデートが終わろうとしていた。 「そ、そうか。じゃあ玄関まで見送るよ。」 「いいっていいって。足怪我してんだし、桐乃だけで充分。」 「アタシは強制なんだね・・・。」 「じゃあな、京介。またいつか。」 そういって加奈子は俺の部屋から出て行った。 なんだろう、この全てを失ったような感じは。 おそらくこれからもメール等で連絡は取れるだろう。 でも、今日の昼からずっと視界の中にいた加奈子が視界から消えると胸に寂寥感が襲ってきちまうんだ。 ずっと傍にいてほしい。ずっと声を聞かせて欲しい。 こんなことを思うのは、多分。いやきっと。 ―――俺が加奈子のことを、好きになってしまったからだ。 「さーて・・・。これからどうすっかな」 芽生えた自分の気持ちに気付いた俺は、これからのことを考える。 桐乃も加奈子も、強いて言えば黒猫も幸せにしてやりたい。 でも俺はその中の一人を好きになってしまった。 加奈子が残していったもの。 それは身体のところどころに残っている加奈子の感触と 俺の脳内へ残ったモヤモヤだった。 この後俺は、どうすればいいんだろうか。 ベットに寝転がって天上を見ながら考える。 みんなの幸せを、なんて欲張りを言ってる場合じゃないんだ。 それでも・・・ 「答えなんて・・・。一つしかねーやな。」 俺は最後に残った加奈子の手の感触を、強く握り締めた―――
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/568.html
http //pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1316537661/539-563 とりつく島もなく一方的に捲し立てると部屋を出て行ってしまった。 「あいつ―――俺に手錠はめたまま帰りやがった」 連絡するなと言われて、連絡しないわけにもいかないので メールしようとして気付く。 俺の電話はあやせからの着信で通話状態だったのだ。 だからクローゼットにいるあやせにも会話が筒抜け状態。 あいつは俺が桐乃の応対の為にちょっと部屋を出た隙に 自分の靴と服を隠し、ついでに俺の携帯まで弄っていた。 戦慄するよりも素直に感心してしまった。 もしかしたら監視カメラや盗聴器くらい有っても、不思議じゃない。 『あやせ……もう一度ちゃんと話がしたい。 だから落ち着いたらまた連絡して欲しい。俺はいつでも良いから』 とメールしたがもちろん返事はなかった。 やる事なんて無いのだから俺は風呂に入る為に服を脱ぎ Tシャツは脱げないのでTシャツ来たまま風呂に入った。 お気に入りだったのに、見事なダメージTシャツに……… 風呂に入ったのは30分かそこらだと思う。 何気なく携帯を見て俺は100%純粋な恐怖を感じた。 ―――着信不在76件 ―――メール未読101件 脅迫文ですらもう少しマトモだろうと思われるほど 悪意、呪詛、恨み、辛みetc、etcの文言……… 大あわてで電話するがあやせは出ない。 しょうがなくメールすると、さも迷惑そうな内容が返ってくる。 だから放置しておくと、すぐにメール………が。 あ~女ってマジ面倒くさ―――と言うかこれ絶対解決しねぇだろ。 それでもあやせ自身をウザイと思わなかったのは………。 あやせとメールを始めて数時間後どうやらあやせは寝るらしい、が 最後のメールの文面が 『裏切り者で変態でクズで意地悪なお兄さん。 もうあなたの知らない人のこと、考えてしちゃいます。 でも、でも今後、二度とあなたには絶対に、絶対に、絶対に(15回連続の絶対に) 指一本わたしの身体には触れさせませんからっ!!』 無視してると、メールと着信の硝酸弾雨 しかたなくおやすみとメールの返信をする。 色々考えようとするがため息しか出なかった。 そういや黒猫と付き合って、あいつが突然別れを切り出して、失踪した時 随分酷い奴だと思ったものだが……今の俺よりも全然幸せだったな。 あやせには悪いと思うがあの頃が懐かしかった……… 麻奈実と並んで下校した時や黒猫が"神猫"で手を繋いでデートした時が そして こうやって別れるカップルもいるのかなとふと思った。 一瞬だけ、ほんの一瞬だけ"別れ"を想像したが ………すぐに頭を振って、俺はそのビジョンを振り払った。 俺は馬鹿馬鹿しいと思うがあやせの気持ちになる為に 何気なくクローゼットに入ってみる。 あやせは 『次、お兄さんが浮気したらお兄さんをぶち殺して、わたしも死にます。 だからそんな心配無用です。 あ、でも寝取られる方が死ぬよりも辛いなら――ふふ(魅惑)』 と言った そもそも俺が桐乃と食事するのは浮気なのだろうか? と言うよりも―――あいつ、俺が他の女といちゃついたら 俺への罰としてNTRとかその方面で考える回路を作っちゃってるのか? 桐乃の"偽彼氏"事件は可愛いものだったが、あれも多分俺に嫉妬して欲しくて 俺の気を引きたくてやった事なのは今なら分かる。 だがあやせの場合は―――全然洒落にならない。 普段は清楚、清純、純真なのだが、一度リミッターが解除されると 淫靡、淫乱、猥褻、俺の気を引く為にする行動のレベルが無制限で 或意味、それは男冥利に尽きるのだが、やっぱり危なすぎる。 なら、どうすれば良いのか? あいつの中にある、気を引く=別の男の発想を何とかして消さないといけない。 じゃないとあいつは、いつか本当に一線を越えるかも知れない。 そんな事をしなくても俺はあやせを見てるし、ちゃんと魅力を感じている事 を伝えなければ……… 『…………………………』 俺はある決断をした。 もうしょうがない ろくでもない発想だがこれ以外に思いつかないのだから。 あやせと桐乃が喧嘩した時に俺が変態と言う事で騒動を丸く収めたように… 一旦事が起これば、俺が何とかするしかない。 あの時は桐乃がエロゲー好きの変態であってはいけなかった。 今回は俺の可愛い彼女を変態にするわけにはいかない。 俺はほとんど眠れずに朝起きると 『昨日の夜クローゼットに入ってみた。暗くて狭くて淋しい場所だ。 あやせをこんな気持ちにさせて本当に悪かった。 もう何の意味もなく手遅れかも知れないが、おまえがかけた手錠そのままにしてる。 馬鹿馬鹿しいと言うかもしれないが、俺はこれがおまえとの絆だと思ってるから』 とあやせにメールを送って、手錠のまま大学に行った。 賢しいが同じ大学にいる赤城に手錠状態の写メまで撮って貰った。 理由を色々聞かれたがおまえのせいだとだけ答えた。 きっかけはエロDVDだったのだから。 幸い麻奈実には会わずに済んだ ―――色々な意味で今、麻奈実に会うのは非常に不味い。 俺は学校が終わるとにあるものを買う為に街に出た。 職質こそされなかったが、すれ違う人々の反応は予想通り。 買うものはなかなか良い値段だがしょうがない。 考えてみれば、桐乃、麻奈実、黒猫、全員に色々プレゼントしてたのに 恋人のあやせにはしてなかった事に気付く。 朝からずっと返事が来なかったが一方的にメールした。 と言うか、本当にストーカーの如くメールしまくった。 やっとあやせが望んでいた事がわかった気がする。 ―――そして何であいつが手錠なんかを持ち出したのかも 家に帰っても、ずっと待ったがあやせはなかなか連絡をよこさなかった。 今日はもう来ないのかも知れないと諦めた時にメールが届いた。 時間は深夜 『裏切り者の変態さん、お見舞いに来て下さい』 とだけ書かれていた。 考えるより先に行動した、あやせへのプレゼントをポケットに入れ普段はあんまり 乗らない自転車を引っ張り出して手錠のまま、あやせの家に向かう………。 もちろんあいつは実家暮らしだし、行ってすんなり仲直りが出来るとも思えないが。 そういや桐乃の為にエロゲー買ったことや桐乃を送るために二人乗りもしたっけ 不安な気持ちを誤魔化す様にあの時の事を考えながら自転車を走らせた。 俺とあやせが急速に仲良くなったのは多分、加奈子のライブがあったあの日からだ。 俺は会場で花嫁姿の桐乃と手を繋いでる瞬間をあやせに見られた。 その後、あやせの様子が変だったから俺はあやせに電話した。 それが桐乃や"頼み事"関係なく、純粋にお互いの為だけに話した初めての機会だった。 一度だけのつもりの電話が受験勉強の息抜きと言う口実で 週一から三日に一回になり、毎日話すようになるのには時間はかからなかった。 静かで、とてもささやかな好意があるのはお互いに薄々は感じていた。 普段は『ぶち殺す』だの『変態』だのキツイ言葉を吐くが、普通に話してみれば 女の子らしく、俺は純粋に気軽に話しの出来る年下の友達が出来たのだと その時は簡単な気持ちで考えていた……のだが。 思えば―――特別なキッカケが無い限りは俺とは話さないと決めていた、 あやせのルールこそ桐乃に遠慮した自制だと今なら或いは言えるかも知れない。 息をきらせて、あやせの実家の目の前に到着する。 『着いた』 とだけメールした。 案外、何の返事もせずにこのまま放置もあるのかもなと高をくくるではないが、 そう期待した部分も正直あった。 流石に真夜中に手錠した男が家に入るのはどう考えてもヤバイ。 だが――― 『裏に回ってください…勝手口が開いてるので入って』 との文面が ハァ………ため息をつくがしょうがないので言われた通りにする。 しかし前回あやせの家に行ったのは黒猫と付き合ってる時で 階段から転げ落ちてそれこそ命からがら逃げ帰ったんだった。 緊張で胃が痛くなるのを我慢しながらドアを開けると――― 「本当に………来たんですね(無表情)」 「もちろん、風邪は大丈夫か?」 「一応…………わたしは見つかっても構いませんが、それがイヤなら黙って わたしの部屋に来てください」 俺は靴を持ってあやせの後に従った。 何度かあやせの部屋に上がった事はあるが―――あの時とは状況が違う。 真夜中に不機嫌な彼女の実家に手錠して侵入する しかも変な企みまで胸に秘めて ―――下手をすると、俺の人生終わるかも知れない。 「………その手錠(抑揚のない声)」 「ああ、おまえカギ持って行ったからな………でもこれってさ 考えてみたら、おまえが俺にくれた初めてのプレゼントみたいなもんだろ? だから壊すのも悪いかなと思ってさ。俺の可愛い彼女の贈り物だからな」 「返してください…」 「へ?」 「返して」 「な、なんで?」 「良いから、返せって言ってるでしょっ!!!!(大声)」 「へっ、そんな事でビビってたらおまえの彼氏なんてやってられっかよッ!」 「お(兄さ)、あなたはもうわたしの彼氏じゃない!!!(怒声)」 そろそろ声がヤバイと思った俺は―――あやせに覆い被さり、口で口を塞ぐ ファーストキスはあやせに告白されて、了承した時にした(むしろされた)。 2回目は昨日のエロDVD事件の時にあやせに嬲られながらやられた。 3回目は思い出すのも恥ずかしいが、良い雰囲気で出来たと思うが。 4回目は鉄の味……… あやせとのキスに法則なんてものがもしあるなら、奇数回は良いキスってことだろう。 そして5回目のキスは………? しっかり鉄の味がする―――痛みが全身に広がるほど、容赦なく俺の舌を噛む それでもあやせが窒息するほど、無理やり唇を重ねる。 ここで辞めるなら最初から、あやせの彼氏なんてやってられないのだ。 「わ、わかった……から、お、お兄さん苦しいです、息が……ハァハァ」 「ぜぇぜぇ………な、何が分かったんだ?」 「わ、わたし………風邪引いて…て……」 そうだ―――我ながらバカだった 俺の可愛い彼女は風邪引いて寝込んでるのに 「す、すまん…そうだった、俺何やってんだ(猛反省)、(超土下座)」 「それよりも、わ、わたし達もう恋人じゃないんだから! そっちの理由でちゃんと反省してください!」 「その点では全く反省出来ないな!俺はおまえの彼氏だし(尊大)」 「ち、違う!」 「(遮って)と言うか"彼氏"と言う点でもやっぱ反省しないとかもな」 「?」 「俺って全然男らしくなかったもんな。キスにしたってそうだ。 ―――告白したのもおまえ、キスしたのもおまえから、2回目もおまえ 3回目もあやせからせがまれてしたし、4回目は途中でひよって未遂 だからこれからは俺が強引にしようと思ったんだが………」 「な、何が言いたいんですか?」 「これだよ、これ(手錠をあやせにかざす)」 「だからそれが何だって言うんですか?! 真夜中にそんな変態自慢されても困ります………気持ち悪い(嫌悪)」 「まだ上手には言えないんだが、手錠もキスも……… 本当はおまえが俺にして欲しかったんじゃないのか?」 「……………」 「メールにしたってそうだ、、あんな狂ったみたいに、一方的に―――」 『だ、誰が!!!』 とあやせが叫ぶ前に機先を制して、今度は人差し指をあやせの唇に当てる ―――最悪噛まれるのを覚悟したが、あやせは大人しく黙ってくれた。 「俺が狂ったみたいに送れば良かったんだ、本当はさ。 おまえに………そんな真似をさせた俺が全て悪かったんだ。 だからここからは俺の勝手な独りよがりの妄想で、ストーカーの論理かも知れないが (本当はその方が良いのだが)、あやせ………」 「い、言ってください、そのストーカーの論理を、京介さんの考えてる事を わたしに……教えて」 「あやせが色々な事に嫉妬するなら、俺はそれ以上におまえに嫉妬してやる。 あやせが俺の事をいつも考えてるなら、俺はそれ以上におまえの事を考える。 あやせが俺の事を雁字搦めにして縛りたいなら、俺がもっと強い力で おまえの事を拘束して束縛してやる………おまえを捕まえててやる!」 とこんな立派な演説をやって もし俺の勘違いで、単なるストーカーで変態のカミングアウトになってたら? まぁでも、あやせがそうじゃないと言うならそれはそれで良いのかも知れない。 俺の可愛い彼女の為に………俺の人生や名誉は全部くれてやる ―――きっと愛情ってそういうものなんだ。 あやせは――― 「…………………き、気持ち悪い、もう近づかないでください。 わたしに二度と」 ―――この時のあやせの顔を、俺は一生忘れないだろう 「そ、そうか………すまなかった」 まぁ普通そうだよな。これで良かったんだ、多分 あやせは無言で俺の手を取ると、カギを取り出して手錠を外した。 手錠の重みと同時に色々なプレッシャーから解放された気分 本当は嬉しい筈なのに………これで良かったと思ってたのに なのに俺は――― 「これが京介さんの顔―――わたしが、わたしが勇気を出して 初めて好きって言った時、あなたはこんな顔をした………」 「あやせ………おまえは」 なんで……そんなに優しいんだ 「お兄さん………これで解放して貰えると思いましたか? わたしがどれくらいあなたの事を恨んでるのか、分かってます…か? こんな事でわたしの復讐終わると思いましたか?」 俺はあやせから手錠を取り上げるとあやせに無理やりはめて 後ろからしっかり抱きしめた……… 「俺って、やっぱ情けねぇな。 満足におまえに変態って呼んで貰えるほどの覚悟も勇気もないんだもんな ごめんな、あやせ」 「本当に救いきれない。 一途にわたしだけにものにはならない癖にわたしのことも、ちゃんと 捕まえてもくれない……最低の人」 「本当はこれでも決心してきたんだけどな………そのつもりだったんだ」 「京介さんは、どうせヘタレでシスコンで、スケベで口だけ――(キスされる)」 「もうおしゃべりの時間は終わりだ、あやせ(強引)」 「まだわたしは病み上がりなんですよ?ヘタレのお兄さん(呆れる)」 「そうだな………でも俺は"優しい変態"を目指してるから今回はこっちだ」 「い、き……なり下着まで降ろして、な、何?お、お兄さん…えぇ?(戦慄)」 「そういや、口でしてもらった時おまえに噛み切られるかも知れないって ビビったな(苦笑) おまえはその変態にどんな事されるんだろうな?クク(下卑た笑)」 「ちょ、調子にのってっ! どうせあなたは、女の子に手錠しないと何も出来ない……… ヘタレの卑怯者の裏切りもぉ…あぁ…ん……ちょっ…と……いき…なり」 「その通り、だからもうトコトンおまえに軽蔑されることにするわ。 今からは中途半端はなし―――0か100かだ。 これが終わったらいくらでもぶち殺して良いぞ(舐める)」 「あっ、き、京介さん………だ、ダメ………駄目で…す ………わ、わたし風邪ひいててお風呂入ってないから やめてぇ………き、汚いからァ……きたな…い…か…ら……」 「へぇそっか、でも辞めないぜ!舐めるんだ!我ながら最低だな(ノリノリ) 俺がおまえより――あやせが引くほどの変態になってやる(舌入れる)」 「あっ゛……く、苦しいから、京介さ……ん、い、息が…出来ないから」 「ほら――人工呼吸の時間だ。 もう俺は容赦しないぜ!イヤなら俺の舌を噛み切って良いからな(男らしく)」 「変態!レロ、変態!、ペロ………変態のくせに……変態のくせにィぃ!!!」 「やっと…変態は認めて貰えたか。ほら次はこっち(また舐める)」 「あっあんっ……あ、後で覚えてて…おほ゛えてて……ずっと同じ……… ずるいぃ………狡いから………す゛るい………からァ…だめ………」 「俺はヘタレで変態でずるいんだ。でも裏切り者だけにはならないつもりだぜ(舌技)」 「わ、わ、たしの……わ、たしの中に舌入れて………あん、舌入れたまま 舌入れて゛喋らないで゛、へ……へんになるから゛……だ゛め、だからぁ」 「………………(無言)、(舐めたり、吸ったり)」 「はなしぃ、話をきけぇぇええぇ(足をじたばた)」 「いやなのか?(舐めつつ)」 「イヤに決まってるでしょ!変態!死ね!」 「駄目だ、駄目だ、これじゃダメだ! やっぱ"優しい"だけの変態ではダメなんだ!やっと分かったわ(確信)」 「き、京介……さん?(ぽか~ん)」 「多分、このままだとおまえには、おまえの狂気やおまえの愛情に勝てない。 俺はおまえを変態のままにさせてたらダメなんだ!(決意)」 「あの………京介さん、え、えっと…その口ではイヤって言ってましたけど、わたし ほ、ほんとうはそれなりに気持ちが良いと言うか愛情も感じてるし(フォロー)」 「あやせ、これが俺の全力だ!(全力)」 「いっ?き゛な゛り゛………そ、そこ吸ったら、吸っちゃ……あ゛あ゛あんっ」 「これから俺はおまえを躾ける、多分、これやったら今日俺はおまえに本当に ぶち殺されて死ぬかも知れない!だから、だから(愛の)」 「なに………を……な、何をす、する……つもり……?」 俺はあやせのケツ(人知を尽くして)を、ぶった叩く(天命を待つ) 「あやせ……愛してる!!!!!!(告白)」 「い、いたぁぁい、ば、ば、ば、ば―――ちょっとバカじゃないの!!!!!」 「―――――(無言)、(強引に吸う)、(ちょっと噛む)」 「そ、そこは………ん、い、意味が、あっあ゛………強すぎるぅからぁ……」 「あやせ、おまえはこうしてほしかったんだよな?(狂気)、(叩く)」 「そっ、そんなわけないでっ……交互にぃ………交互にしゅるなァ……… そっちは……ほ、ほんとうに……意味が……あっん、っん、い、みぃ…い……みが」 「俺、思ったんだ………この前みたいにおまえの言いなりになって おまえに支配されるのは楽だなって、おまえはエロくて、綺麗だし、魅力的だし! (すごく舐める)」 「っ……ぅん………あっ……だから……んっ………だ…か…ら?」 「だけど、本当のおまえは優しくて思いやりのあるちょっとか弱い女の子で(叩く) 俺が頼りなくて、ダメだからおまえ、あやせに無理させてるのかなって(絶舌技)」 「あん………だから……だ……から…ァ…き、きょうは(京介)…んッ…あっ きょうは………きょうは…あっ…ァ…ん…イキ………そ……う」 「おっとダメだぜ!あやあや、今日の俺はひと味違うんだ(レロレロ)、(叩く)」 「きょうの………きょうの、きょうの意地悪゛、い゛・し゛・わ゛・る゛・!(お尻振る)」 「俺があやあやの為に意地悪になる!変態になる!だから、だから(大地のドラム)」 「わ、わたし、こわい………お尻…叩かれて………た、たから…て……あぁ 気持ちいい…の……叩かれるだけ………きょうに……ァ…たたかれて気持ち…いぃ」 「あやあや……愛してる。 だから、あやあやはもう普通の女の子で、素直なおまえのままで良いんだ!! 無理しなくても………ずっとそのままでっ! 俺が――俺がずっとおまえは捕まえてるから、絶対に離れないからっ! ずっとずっと一緒だから!!!!!!! もう嫉妬しなくても、焼き餅焼かなくても、ずっとずっと」 「きょう、きょう………好き、好き、ずっと好き………なの………きょうが」 「ああ、ずっとずっと好きだ、ずっと前から好きだ(思いっきり強く抱きしめる)」 「あっ………あ゛ん……きょうに………きょうに抱きしめられてイ……ク…からァ わ、わたし……抱きしめられただけでイッちゃう………よ………きょう、イイ? きょう、きょう………わたし………イッって………イイ………?(昇天)」 五分後 「お兄さんの変態――女の子に暴力ふるうなんて最低ですっ!(抗議)」 「あ~あ、俺が許可してないのに、勝手にイッてさ。マジでガッカリだわ(冗談で)」 「ご、ごめんなさい、ごめんなさい―――えっ?てそんなっ、わたし?!(混乱)」 「おまえってキャラ変わったよな……?(驚愕)」 「っぅ………うっ、うるさい、うるさい、うるさい!! 変態、変態!やっぱり、あなたは―――最低最悪のDV男ですっ!!!」 「へいへい―――あっ、そうだ。 あやせの手錠姿も可愛いんだけどさ、日常でその姿って流石に不味いだろ? ………だからさ」 「可愛いとか言っても許さないんだから!フンっ、ぶち殺しますから――絶対に」 「ちょっと話、聞けってば(軽く尻に触れる)」 「きゃ、あん……ってちょっと……もう、バカ、でも……(心の迷路)」 「やれやれ………はい、これ―――おまえに似合うと思って買ってきた」 結構値の張った、アクセサリー 「これって――ネックレスと言うよりもチョーカーかな? ど、どうしていきなりプレゼントだなんて………も、物で釣ろうとしても 絶対にDVは許さないんだから必ずぶっ殺すんだから!!!(ジタバタ)」 「まぁ話を聞けってば(おもむろに尻を揉む)」 「あんっ………き、聞くから、聞くから辞めて…く……ださい(敏感)」 「さっきは素直なあやせでイイって言ったけどさ そんないきなり素直になれるもんでもないだろ? いや…どっちのあやせも本物で、俺はどっちのあやせも好きなんだが それだと今まで通りになっちゃうからな………」 「だから……?」 「手錠の代わりにこのチョーカーでおまえを受け止める! 普段はこれつけててヤンデレのあやせのままでイイから………」 「だっ、誰がヤンデレですか!?もう今からぶち殺しますよ!(憤慨)」 「そうそう、そういうおまえ………」 「なら………このチョーカー外したら?」 「別に今まで通りでも良いし、甘えたいなら思いっきり俺に甘えてくれてもイイ。 俺がおまえの為に変態にもなるし、出来るだけ何でもするぜ」 「分かりました。じゃ、きょう………わたしに付けてみて…ください」 「やっぱり似合ってるな。あやせ、本当に綺麗だ」 「お兄さん―――ふふ、処刑開始しましょうか? と言うかこんなもの付けさせて……本当は虐めて欲しかったじゃないですか? この変態(魅惑)」 「そうでもないけどな――あっ(ズボン)、(パンツまで降ろされる)」 「うわ………本当に引きます。 わたしのお尻叩きながら……出しちゃってたんですね。 どんだけ変態なんですか?目の前に本物があるのに……レロ(お掃除)」 「おまえが普通にしゃぶってるのってエロイよな? 髪かき上げながら必死にしかも自分の自宅だろ男連れ込んでさ どう考えても親引くだろ、これ(嘲)」 「あ~!今はわたしのターンなんだから! お兄さんは虐められて喘いでれば良いんです!じゃないと、 わたし……また意地悪―――(言いかけて辞める)」 「あやせは頭が良いもんな。おまえが嫉妬する気持ちは本当に分かるんだ。 でもさ、変な感じにならない様に俺が変態になるって決めたんだが………」 「……………お兄さん、わたし決めましたっ!」 「な、何を?」 「このまま、お兄さんに全部あげるつもりだったけど、それじゃやっぱりダメ なんだって………二人で儀式しましょう?」 「ぎ・し・き・?」 「そう――お兄さんがわたしを受け止めてくれたみたいに わたしもお兄さんに魔法をかけます。残酷だけど、優しい魔法………」 「……………」 「お兄さんが一生、わたしだけのものになる魔法。 二度とわたしが嫉妬してお兄さんを困らせないようにする魔法です。 だから―――あっ、レロ、ちゅ」 「(あやせの口を)、(口で塞ぐ)」 そんな都合の良い魔法なんてあるのだろうか? あやせが、その魔法を詠唱し終えた時――俺達はどうなるのだろうか? 期待と不安、でもそんな事はきっと知らない方がイイに決まってる。 あやせが二度とこんな事を口走らない様に 俺は何度でもあやせの口を塞がなければならない……………… もし自分が童貞の時に黒髪のモデルで、超が三桁くらいは付く美少女で 自分の事を死ぬほど(或いは殺したいほど)好いてくれる15歳の彼女が 居た場合はどう思うだろう? 多分、こちらがお願いすればどんな事でもしてくれるかも知れないが 単なる言いなりではなく、"怪しい魔法"まで使おうとする彼女が居たら………? 俺は―――― おわり
https://w.atwiki.jp/vip_oreimo/pages/591.html
「ふう、まだ寒いな・・・」 何度目かの家庭教師を終え帰路につこうとしたその時、 「おにぃちゃん」 掛けられた声に振り向くと、五更珠希――――日向の妹が玄関からちょこんと顔を出していた。 「ん?どうしたの珠希ちゃん?」 俺がそう声を掛けると、珠希はててててっと俺のすぐ傍まで走ってきた。 相変わらず可愛らしい擬音の似合う娘だな。 「あのですね・・・」 「うん、なに?」 「どうしておねぇちゃんとちぎりをむすんでいたのですか?」 「・・・ごめん珠希ちゃん。ちょっとお兄ちゃんにもわかるように言ってくれるかな?」 俺は視線を合わせるようにしゃがみこむと、意味不明の単語に疑問符を浮かべる。 契り?結ぶ? 以前黒猫と付き合ってる時に聞いた言葉だが・・・ん?いや、いやいやちょっと待てよ!? あれは確か初めて黒猫の家にきて、日向と珠希に会って・・・そんで・・・ああっ!! 「ちょちょっと待った珠希ちゃん!」 「えーと・・・どうしておねぇちゃんと、ちゅーしていたのですか?」 やっぱりだーっ! 「み、みてたの?」 「はい」 にっこりと笑いながら無邪気に答える珠希。 そういや俺の家庭教師中、この子どこに居たんだ? 「珠希ちゃん?」 「はい?」 「お兄ちゃんと日向ちゃんがお勉強してる時、珠希ちゃんはどこに居たのかな?」 「おねぇちゃんに言われておへやにいました。おねぇちゃんが『こうさかくんはあそびにきてるわけじゃないんだから、たまちゃんはおへやから出ちゃだめだよ?』ていいました」 あーいーつー! 追い出し方がまるっきり黒猫とおんなじじゃねーか!! それで失敗した姉の姿をお前は知ってるだろう張本人! 「でもやっぱりおにぃちゃんにあそんでもらいたくて、え本をもっておへやをでてしまいました」 悪いことをしたんだと思ってるのだろうか、珠希は少ししゅんとしているようだった。 まったく。 「ごめんな珠希ちゃん。これからは一緒に居ていいからね?」 「・・・いいですか?おねぇちゃんおこりませんか?」 「怒るわけないだろ?今まで日向ちゃんが怒ってるとこ見たことあるか?」 「・・・ないです」 だよな。 日向はなんだかんだで珠希には大甘だからな。 「だったら平気だ。なんなら俺から日向ちゃんに言っておいてやる」 「ほんとですか!?」 「ああ」 笑いながら頭をなでてやると、パアッと顔を明るくして珠希が抱きついてきた。 「うれしいですー」 「はは、これからよろしくな」 しかし本当にうちの妹とは別もんだな・・・。 なんか悲しくなってきた。 「それでおにぃちゃん?」 「ん?なんだ?」 「どうしておねぇちゃんとちゅーしてたんですか?」 忘れてたーっ!! 今それ聞かれてたんだよ俺っ! 「あー・・えーっと・・・」 なんて言う!?考えろ俺っ!! 「えーっと・・・こ、これからも仲良くしようねっていう意味でしてたんだよ?」 「?」 「ほら今、俺は日向ちゃんに勉強教えてるだろ?だから喧嘩しちゃったらできないだろ?だから仲良くしようねって意味でしてたんだぞ」 どうだこの言い訳! 一瞬で考えたとは思えないだろ!? 伊達に理不尽な妹や電波の元彼女、ちょっとヤンでる中学生に鍛えられてないっての! ろくな奴いねーな俺の周り・・・。 「へええ」 「わ、わかってもらえたかな?」 「はい!」 珠希はぐっと拳を上に突き出して全身で肯定を表した。 はは。ホントに可愛いなこいつは。 「じゃあわたしにもちゅーしてくださいおにぃちゃん」 「なんでそうなる!?」 えーっ!?なに言っちゃってんのこの子!? 「ど、どうしてかな珠希ちゃん?」 「わたしもおにぃちゃんとなかよくしたいです」 ニコッと珠希が笑って言った。 あーそっかそっかそーきたかー。 なるほどな―そりゃそうなるか―・・・って俺のバカー!! 「えーとえーと・・・」 「・・・なかよくするのいやですか?」 泣きそうな顔やめてっ! あーもう。 これ一回だけ・・・これ一回だけ・・・。 「・・・おねぇちゃんには内緒にできる?」 「?ないしょなんですか?」 「そう。できる?」 「んーと・・・はい!ないしょにできます!」 「よし。じゃ・・・目瞑って・・・」 「はい!」 ん、と素直に目を瞑る珠希。 こうして見るとやっぱ似てんだよなこの三姉妹。 やっぱ可愛い・・・って、さすがに珠希はヤベーだろ!? いかんいかん・・・変な気持になる前に・・・。 ちゅ。 「・・・はい。もう目、開けてもいいよ」 「はい・・・えへへ」 少し照れくさそうに笑う珠希はギュッと俺に抱きついてきた。 「えへへ、おにぃちゃんだい好きです」 「はいはい、俺も大好きだよ」 「・・・なにをしているのかしら?」 後方からの声に、ポンポンと珠希の頭を叩いていた手が一瞬で硬直する。 ちょ、ま、このタイミングで・・・? 「あ、姉さま」 黒猫登場かよ!? 「よ、ようおかえり・・・」 俺はギギギッと油の切れた人形のような動きで首を後ろに向けた。 「ええ、ただいま。で?もう一度聞くわ。なにをしていたのかしら?」 「た、珠希ちゃんとスキンシップ?」 「・・・アパートの廊下で?」 「か、帰ろうとしたら、珠希ちゃんが出てきちゃって・・・」 「へえ・・・そうなの珠希?」 「はい!」 「・・・嘘じゃないわね?」 「はい!姉さま」 黒猫の言葉に元気よく返事する珠希。 「ふぅん、そ」 珠希の言葉に、不承不承といった体で納得する黒猫。 やっべー! 間一髪だったよ今俺! 見られてたら完全にアウトだったよ!! ありがとう珠希! 「おにぃちゃんにチューしてもらいました!」 「うおおおい!言っちゃうのかよ!?」 さっきお兄ちゃんと約束しただろ!? 「?・・・おねぇちゃんには言ってませんよ?」 頭にはてなを乗っけたまま珠希は、間違ってないよね?てな風情で聞いてきた。 あーそっかー、そうだよねー。 おねぇちゃんは日向であって、黒猫は姉さまだもんねー。 そっかそっかーあははは。 「・・・先輩?」 「はいぃ!!」 「・・・ちょっと・・・お話をしようかしら?」 やばい。 これ俺死んだね。 だって黒猫の目に・・・光彩がねーもん 「珠希は先に帰っていてちょうだい」 「はい姉さま」 ててててっと、出てきたときと同じように走り去ると、玄関に入る直前俺を振り返って珠希はこう言った。 「またですおにぃちゃん」 ほわんとした笑顔で手を振ると、パタンと扉を閉めた。 ふるふると手を振り返しながら、俺は心で呟いた。 珠希ちゃんごめん・・・。 「・・・さ、先輩?行きましょうか・・・?」 次は・・・ないかもしれん。
https://w.atwiki.jp/vip_oreimo/pages/358.html
840 :◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/05/02(月) 22 29 58.30 ID D+xw36Tuo 俺は玄関先で靴の底の泥をよく落とし、服に付いた埃を軽く払ってから ドアのレバーハンドルに手を掛けた。 泥なんか付けたまま家に入ると、妹のヤツに怒られちまうんだよ。 玄関の上がり口に腰を下ろし、俺が靴紐を解いていると、その音を聞きつけたのか 妹が早速リビングから出てきた。 「お帰りなさい、お兄さん。……で、今日はどうでしたか?」 「うーん、今日はそれほどの収穫はなかったよ。 何かの昆虫らしい化石がいくつか見つかっただけさ。 俺は専門家じゃねえから、そのへんはよく分からんけどな。 それにしても、今日は疲れた~」 何で俺が化石の発掘なんかしてるかって……別に趣味でやってるわけじゃねえよ。 俺の親友の赤城ってヤツが、サッカー部の他に、最近になって遺跡発掘研究会とかいう わけの分からん同好会に入ったもんだから、俺も仕方なく付き合ってるだけさ。 そもそも遺跡の発掘と昆虫の化石の発掘って、違う分野なんじゃねえのか? 俺の見たところ赤城のヤツ、どうやらその同好会に気になる女の子がいるらしい。 赤城は極度のシスコンで、妹の瀬菜にしか興味がねえのかと思ってたけど、 どういう風の吹き回しなのかね。まぁ、俺には関係ねえけどさ。 「お兄さん、お風呂なら沸かしてありますけど…… お腹が空いているようでしたら、先にご飯にしますか? それとも……わ・た・し?」 いつものことだよ。あやせのヤツ、兄貴をからかうのがそんなに面白いのかね。 まだ中三のくせに、わざとらしく腰をくねらせやがって。 だがなぁ、俺だって健全な男子高校生なんだよ。 妹にからかわれていると分かっていながら、ついむきになっちまう。 「おまえはなぁ、なんつーカッコしてんだ、そのミニスカートは何とかなんねーのかよ。 家の中だってのに……短過ぎるだろうが。 おまえ、ジャージ持ってんだろ? 家の中じゃあジャージ穿いてろよ」 それじゃあパンツが見えそうじゃねえか。 俺だって本音を言えば、あやせがミニスカートを穿いてくれんのは嬉しいけどさ、 やっぱ、実の兄貴としては、そんなこと口が裂けても言えねえだろ。 「わたし、家の中だからこんなに短いの穿いているんですけど…… 外ではここまで短いスカートは穿きません。それでもだめですか?」 あやせはミニスカートの裾をちょっとだけ摘まみながら、不満そうな顔つきで俺を睨みつけた。 俺がどういう反応を示すかと、試そうとしている目つきだ。 そんな手に俺が易々と乗るわけはねえだろ。 それにしても、外では穿かないって……どういうことだ? まさかあやせのヤツ、実の兄貴の俺を挑発してるんじゃねえだろうな。 どんだけ俺が普段から妹に、つーかあやせに欲情しそうになるのを抑えていることか。 もしもあやせが実の妹じゃなけりゃ、今頃はあんなことやこんなことや…… 「ま、まぁ……ジャージってのは極端かもしれねえけどさ、 あやせだってもう中三なんだからよう、サザエさんに出てくるワカメちゃんじゃねえんだから、 パンツ見せながら家ん中を歩くなって言いたかっただけさ」 「…………お兄さん、わたしのパンツ見たんですか? この変態っ!」 そんなわけで、つい口が滑っちまった俺はあやせからローキックを食らって床に転がり、 あらためてローアングルであやせのパンツを拝んだ後、ほうほうの体で風呂場へと逃げ込んだ。 俺は風呂場の脱衣所の戸を勢いよく閉めながら、思いっきりあやせに言ってやったよ。 「あやせっ! 俺が風呂に入ってる間、絶対に覗くんじゃねーぞっ。 もし覗いたら……俺、泣いちまうからなっ!」 あやせは何も言ってはこなかった。 耳を澄ましてみても、廊下は静まり返っていて人が近づいてくる気配はねえ。 幾らあやせだって、実の兄貴の裸を覗き見る趣味はねえだろうしな。 もしかすっと、パンツの一件で、怒って自分の部屋に行っちまったのかもしれん。 そういやさっき、ドカドカと階段を上る音が聞こえてたもんな。 俺は風呂場の脱衣所の戸をそっと開け、あらためて廊下に誰もいないことを確認してから、 安心してゆっくりと服を脱ぎ始めた。 まぁ考えてみれば、あやせのヤツは俺が外から汚れて帰ってくるだろうと気遣って、 あらかじめ風呂を沸かして置いてくれたんだろう。 さっきは少し言い過ぎちまったかもしれん。仕方ねえ、風呂を出たら謝んなきゃな。 すぐにでも湯船に飛び込みたいところだが、そうするとお湯が汚れちまうと いつもあやせが口を酸っぱくして言うもんだから、俺はそれに従って丁寧に身体を洗うと、 ようやく湯船に身体を沈めた。 「やっぱ、妹はいいよなぁ~。……弟じゃあ、ここまではしてくんねえだろうしな。 あやせを産んでくれたお袋には、感謝しなくちゃいけねえよな」 「お兄さん、感謝するのなら、わたしに感謝してくださいね。お風呂を沸かして置いたのも、 こうしてバスタオルと下着を持ってきてあげたのも、全部わたしなんですから」 心臓が止まるかと思っちまったよ。 俺が慌てて風呂場のガラス戸に眼を向けると、その型板ガラスの向こう側には バスタオルらしきものを手に持って仁王立ちをしている、あやせのシルエットが映っていた。 そういや俺、着替えも何も持たずに風呂に入っちまったんだっけ。 どんだけあやせってヤツは、気が回るヤツなんだかね。 「これで風呂場のガラス戸がガチャっと開いて、お兄さんお背中を流しましょう――」 「お兄さんっ! 心の声がダダ漏れじゃないですかっ。 ……本当に開けちゃいますよっ」 「あやせっ、それだけは勘弁してくれ。俺にも心の準備っつーモンがあんから」 「もう、冗談はそれくらいにしてください。着替えは、ここに置いておきますから」 あやせの気遣いに感謝しつつ、俺は風呂場にも鍵を付けるって考えたヤツにも感謝した。 だって、あやせが脱衣所を立ち去る際に、小さく舌打ちするのを聞いちまったんだもん。 俺は風呂場の外の気配に全神経を集中させ、音を立てないように風呂から上がると、 あやせが用意してくれたパンツを速攻で穿いた。 俺がパンツ、といってもトランクスとTシャツというラフ過ぎる格好でリビングへ行くと、 あやせが冷蔵庫から麦茶を出してグラスへ注いでくれた。 もうさっきのことは怒っていないようで、あやせはいつもの笑顔だった。 俺の妹にして置くのは勿体ねえなと思いつつも、やっぱ妹で良かったんだとも思ったよ。 だってそうだろ、妹じゃなかったら、こうしていつも一緒にいられねえじゃねえか。 俺が麦茶を飲み干すのを待っていたかのように、リビングのソファーに座っていたあやせが おもむろに声を掛けてきた。 「お兄さん、来週のお兄さんの誕生日のことなんですけど……」 「俺の誕生日っていうことは、あやせの誕生日でもあるわけだろ。 ……で、それがどうかしたのか? 今年は二人とも受験生だから、プレゼントはお互いに自粛しようってことだったけど」 何を隠そう、俺と妹のあやせは、歳は三つ違いだけど誕生日は偶然にも同じなんだ。 兄妹で誕生日が同じなんて、めずらしいことかも知れねえけどな。 俺たちがガキの頃、お袋なんか、ケーキを買うのが一回で済むって喜んでいたけど。 あやせが中学生になると、家族で誕生日を祝うこともなくなっちまった。 俺はあやせが可哀想になっちまって、それ以来は兄妹だけで誕生日祝いをするようになった。 あやせはガキの頃から、何かってーと俺にまとわり付いてきた。 俺もあやせの世話を焼くのはイヤじゃねえし、むしろ率先してやってきたつもりだ。 そんな俺たちを見て、『おまえら兄妹じゃなくて、本当は恋人同士なんじゃねえのか』なんて、 口の悪い友人の赤城によくからかわれたもんさ。 以前は赤城からそう言われて、俺も少し変なのかと真剣に悩んだ時期もあるけど、 あやせのような可愛い妹を持っちまった兄貴なら、誰だってこうなるさ。 そう言ってる赤城だって、てめえの妹の瀬菜にベッタリじゃねえか。 お互い様ってもんだよ。 「ええ、ですからわたし、お互いにお金を掛けなくてもいいプレゼントを考えたんです。 品物はわたしがあらかじめ用意しましたから、 お兄さんには、それにサインをして頂くだけでいいんです」 俺もさぁ、超短いミニスカートでソファーに座っているあやせを前にして、 この格好のままリビングの椅子に腰を下ろす勇気は持ち合わせちゃいねえんだ。 取りあえず、あやせにはこのまま待ってもらうことにして、俺は部屋に着替えを取りに戻った。 それにしても、あやせが用意したプレゼントって何だ? 俺がスウェットのズボンを穿いてリビングへ戻ると、気付いたあやせが後ろ手に何かを隠した。 俺の動きを眼で追いながら、何やら悪戯っぽい笑顔で俺を見ていやがる。 たぶん後ろ手に隠したモンが、さっきあやせが言っていたプレゼントなんだろう。 金は掛けねえし、俺はサインをするだけだっつーから、大したもんじゃねえんだろうけど。 俺の妹は、たまに兄貴の俺が想像もしねえようなことを思い付きやがるからな。 サインだけだって言われても、用心するに越したことはねえ。 「――で、俺は何にサインをすりゃあいいんだ?」 「これにお願いします。……下の方に、サインをするところがあるでしょ」 あやせが俺にサインをしろと差し出したものは、映画のチケットくらいの小さな紙片だった。 しかし、俺がサインをする部分以外はあやせが手で隠しているもんだから、 幾らなんでも俺だって気軽にサインをするわけにはいかねえ。 どう見ても映画のチケットなんかじゃねえし、よく見りゃ手作りのような気もする。 たぶん、あやせがパソコンで作ってプリントアウトしたモンなんだろう。 「どうしたんですか、お兄さん? サインをしないつもりですか?」 「いや、そうは言っても、これが何なのか分からんのにサインできねえだろ」 「お兄さんは、妹のわたしの言うことが聞けないんですか?」 俺はあやせの声のトーンが変わったことにビビリながら、そっと妹の顔を窺った。 あやせの顔からは笑顔が消え、その瞳からは光彩が消失していた。 このまま俺が押し黙っていれば、あやせの口から『ぶち殺しますよ』との台詞が飛び出すのも 時間の問題だろう。いや、俺の命の問題かもしれん。 「な、なぁ、あやせ……もしも俺がサインしなかったら、どうするつもりだ?」 「……お兄さんがサインをしないなんて、わたしは全く考えていませんけど。 もしそういうことになれば、“お兄さんが、わたしの下着を盗みました”って、 お母さんに言い付けるだけです」 「おまえなぁ、そんなウソをお袋が信じるとでも………………」 俺は、あやせの言う通りに黙ってサインをした。 一度サインをしちまった以上、あとは煮るなり焼くなり好きにしてくれっつーの。 何だかんだ言ったって、俺とあやせは昔からけっこう仲がいいんだよ。 時々、兄妹であることを忘れちまいそうになるのが怖いんだけど。 「それでは、お兄さんからサインももらいましたから、これはわたしが預かって置きます。 その代わりに、お兄さんには、誕生日プレゼントとしてこれを差し上げます」 あやせがそう言って差し出した物は、さっき俺がサインをした物と同じような紙片だった。 「……ふぁーすと・きすよやくけん? 何じゃこりゃ?」 つい棒読みしちまった。 手に取って良く見りゃ、その紙片には“ファースト・キス予約券”って書いてあった。 有効期限は無期限、そのうえ譲渡禁止って文言も明記されている。 つまり、あやせのファースト・キスを頂ける券ってことだよな。……そのまんまだけど。 あやせは少し顔を赤らめながら、ジッと俺を見つめている。 俺の妹は一体何を馬鹿なことを考えてんだよ、と思う前に、 すぐにこの券を引き換えようとしていた俺がいることに気が付いた。 しかし冷静になって考えてみれば、俺がこの券を持っている以上、 あやせがどこの馬の骨とも分からねえヤツに、ファースト・キスを奪われる危険性はなくなる。 そう考えれば、妹思いの兄貴としては安心この上ない。 ところで気になることがひとつだけあった。 さっき俺が無理やりサインをさせられたモンも、これと同じような予約券の類なんだろう。 兄妹でお互いに“ファースト・キス予約券”を持っていたって、意味ねえもんな。 「なぁ、さっき俺がサインしたヤツも、何かの予約券なんだろ? ……やっぱ、気になるんだよ。あやせが俺に“ファースト・キス予約券”をくれたんなら、 俺はおまえに、何の“予約”をやったことになるんだ?」 あやせが俺に見せたその“予約券”にも、有効期限は無期限、譲渡禁止って文言が明記されていた。 だが、俺のもらった“ファースト・キス予約券”とは明らかに違う点が、ひとつだけある。 それは、あやせが手に持っている“予約券”には、予約券という文字の左側に入るべき名称が、 今はまだ空白になっていることだった。 (完)
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/267.html
http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1288544881/876-879 もしも、京介が桐乃とぶつからなかったら 前編 三日ぶりの風呂を浴びるため、築30年の今に壁を伝う緑に破壊されそうなボロアパートへ帰る途中、 公園のベンチで横たわってうずくまる人影に目を取られた。 ダンボールを布団代わりにしていないので、すぐにホームレスではないことが知れた。 時刻は午後11時をまわり、季節柄、上着一枚で寝れば命にかかわるほど寒かったからだ。 帰宅途中同僚と飲んだ酒が一気に冷めていくのを感じた。 少しためらったが、ため息を吐いて諦めた。…仕方が無い。 疲れた体に鞭を打って、俺は公園に踏み込んだ。 「おーい、大丈夫か?……高校生?」 近づいて確認すると、なんと寝ていたのは女で、中学生か高校生らしき制服を着てた。 体つきは大分大人っぽいので、多分高校生だと思う。 背もたれのほうに体を向け、寒そうに縮こまっている。 短いスカートから伸びた脚が震えていないところを見ると、相当冷えているに違いない。 腰まで伸ばした茶髪がベンチからはみ出しだらしなく地面に垂れ下がって汚れていた。 「……なに?」 俺の問いかけにかなりの間を置いて、小生意気な声で女子高生(仮)が振り向きもせずに言う。 「こんな時間にどうした、家は?」 「…カンケーないし…ナンパ?」 なんだろう、たった一言二言交わしただけなのに、無性に腹が立つ。 仕事で生意気な高校生の相手することがたまにあるで、慣れたつもりではいたが…。 多分、この妙に幼い声色のせいだろう。それにロングの茶髪も気に入らない あと常に上から目線なのが言葉から透けて見えるあたりもだ。 「ちげーよ。つか家に帰るつもり無いなら警察呼ぶぞ」 女子高生(仮)は、カバッと勢いよく振り向いた。 ガラス細工のように整った顔立ちに、につかわしくない皺を眉間に刻みつけて俺に啖呵を切る。 「はぁ?あたしがなんかしたっての!?」 想像以上の容姿に一瞬だけ気負される俺。 なさけねぇなぁ…。こんな小娘に一瞬でドキッとするあたり実に情けない。 それにしてもこんな時間に男に話しかけられてここまで威勢よく切り返せるあたり、たいしたタマである。 滅茶苦茶イラッとくるけど。 だがこういういかにも場かなDQNは経験上、理詰めに弱い。 ふふふ、覚悟しやがれ。 俺は咳払いをして普段詰め込んでいる知識の一部を得意げに開放した。 「お前未成年だろうが、東京都の条例じゃ午後10時以降は…」 「うっさい!悲鳴上げて人を呼ぶわよ!?」 「!?」 な、何だと!? こ、こんな切り返しは初めてだった。 そういえば普段は必ず二人一組で行動しているし制服を着ているのでなんと言うことは無いのだが… 今は私服で悲鳴に人が集まってきては妙な誤解をされかねない。 「…て、てめぇ!」 餓鬼の相手なんてしてられない。 ポケットを探り携帯を取り出す。 「っちょ、ちょっと、なにしてんのよ?」 「警察に連絡してんだ。てめーとは話にならねぇ」 つか滅茶苦茶ムカつくからな。 こんな腹立たしい奴妹以来だぜ。 あー、イライラする。 こっちは久しぶりに仕事から解放されたばかりだってのになんだってこんな餓鬼のお守なんざ… そう思った瞬間、女子高生(仮)は俺の想像を超える行動に出た。 バチ! 「ってぇ、おい!」 「っふん!」 ――――バキィ!! え、ええええええ!? 嘘、マジで? 突然飛び掛って携帯を掠め取ったかと思ったら、その携帯…膝で圧し折りやがった!? いや、いやいや、ちょっとまて…え?なにこれ? 仕事を始めて一年、大分いろんな奴を見てきたつもりだったけど、 いくらなんでもここまでアクロバティックなやつには会ったことが無いよ? 女子高生(仮)は呆然と口を半開きにしているであろう情けない俺を睨みつけて言い放った。 「つかマジでウザい!あたしが何時何をしようが誰にも迷惑かけて無いじゃん!」 いや、俺の携帯… 「ほら、早くどっかいってよ、マジで大声出すよオッサン!」 最後の一言に、俺の堪忍袋の尾が切れた。 「誰がオッサンだゴルァ!」 「キャ!」 女子高生(仮)の両肩をつかみ、力任せにベンチに押し倒して座らせる。 「ちょ、なにすん…!」 ジャケットの内ポケットから取り出したカードケースを開いて突きつけた。 ふふん、これで少しはビビるだろう…。 「…高坂京介?い、いまさら自己紹介?やっぱりナンパ…」 「そこじゃねぇ!!警察手帳ってところに驚け!」 女子高生(仮)はぷい、と顔をそらした。 「はん!それであたしがビビるとか思ってんの?」 「これはな、逮捕する手順だ…器物破損の現行犯でしょっ引かれたくなかったら、 今すぐ名前と自宅の電話番号とここに居た理由を吐いて携帯電話を寄越せ」 「中身見る気!?」 「署に連絡すからに決まってんだろうが!」 この期に及んで何考えてんだこの餓鬼! むーと唇を結んで俺を睨む女子高生(仮) 俺は容赦無くボールペンを取り出し、質問を始めた。 「名前は?」 「こ……りの…」 「んあ?」 「あ、新垣リノ」 いやな響きの名前だ。 俺は続けた。 「家の伝は番号は?」 「……」 「ほら、どうした」 「…携帯に記録してあって、憶えてない。」 あからさまに嘘だった。 どうやらこういうやり取りは、案外苦手なようだ。 「じゃ携帯をよこせ」 「ない」 にべも無く言い放った。 どうにもこいつは人の苛立ち中枢を刺激するのが上手い。 「おまえさっき『中身見る気?』とか言ってたよな?」 「今は持ってない。家にある」 ほら、と立ち上がって上着をヒラヒラさせてみせる。 ついでにポケットも裏返す。糸くずと小銭がいくらか。 「家は何処だ?」 「千葉」 ジーザス…。 俺は署に帰った後の事務処理手続きの面倒さを想像して天を仰いだ。 あそこの少年課のオバちゃん苦手なんだよなぁ… 「何?」 「何でもねーよ。…で、なんでこんなところに居るんだ?」 聞くまでも無いが一応形式上、聞いた。 リノは今度はまっすぐ俺を見据えて妙にはっきりと言った。 「人探し」 「人?」 意外な答だった。 てっきりただの家出だと思っていたのだが 「…男を探してる」 あー…そういうことか。 「彼氏とかか?」 「…言いたくない」 それきり、むすっとして質問に答えようとしないリノに業を煮やした俺は、ひとまず自分の部屋に上げることにした。 そこで署に電話して引取りに来てもらおう。 「なにそれ、やっぱり変なこと…」 「調子に乗るな。…このまま外に居たら凍えるだろうが」 そういうと、リノは渋々俺の部屋に入った。